2020 Fiscal Year Research-status Report
出入国管理から見る戦後台湾の〈移民国家〉形成史-冷戦からグローバル化まで-
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19K20554
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鶴園 裕基 早稲田大学, 政治経済学術院, その他(招聘研究員) (10804180)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 出入国管理 / 移民 / 在外国民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の業績としては、日本台湾学会報22号に論文「日華平和条約と日本華僑:五二年体制下における「中国人」の国籍帰属問題(1951-1952)」を掲載し、ついで2020年国際政治学会学術大会における「外国人登録と日本華僑:占領期における華僑管理政策の展開(1947-1951)」を報告した。いずれの研究も1950年代における中華民国の出入国管理にかかわる政策を、在外国民に対する作用の観点から検討したものである。上記論文においては、中華民国政府と日本政府が結んだ日華平和条約が在日中国籍者の国籍を決定づける作用をもたなかったことを明らかにした。また、そのような状況が生じた背景として、冷戦戦略を背景とした米国による「台湾の法的地位未定論」の追求が強く影響していたことを明らかにした。これは、中華民国政府が大使館や領事館を通じた華僑管理に一定の限界が生じていた事を示唆するものである。他方、上記学会報告では、以上のような中華民国の在外公館を通じた華僑管理の限界が、占領期における日本側の外国人管理権限の強化と軌を一にして生じていたこと、とりわけGHQから日本政府への、連合国民に対する刑事管轄権の返還によって、従来駐日代表団が華僑に対して発行していた「華僑臨時登記証」が、日本における在留上のいかなる権利をも保証し得なくなったことが背景にあったことを明らかにした。以上のような在外国民の国籍帰属の確定に関するポリティクスは、当時の戒厳令下におかれた台湾の移民管理政策と強い結びつきがあったものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度の成果は従来の内容の延長線上に位置づけられるものであり、現状の進捗としては遅れていると言わざるを得ない。最大の理由としては、新型コロナウイルスのパンデミックにより海外渡航が不可能となり、2020年度を通じて台湾その他における資料調査が行えなかったことにある。
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Strategy for Future Research Activity |
新しいテーマへ取り組むための基礎的な資料にアクセスできなかったことは、今後の研究進捗にも大きい影響が出るものと思われる。2021年度になんとしても海外資料調査を行い、22年度までには新しい成果を発表したい。
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Causes of Carryover |
予定していた海外渡航が出来なくなったため、その残額が生じた。今年度の海外長期滞在調査を実現させ、そちらで使用する予定である。
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Research Products
(2 results)