2021 Fiscal Year Research-status Report
出入国管理から見る戦後台湾の〈移民国家〉形成史-冷戦からグローバル化まで-
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19K20554
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鶴園 裕基 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, その他(招聘研究員) (10804180)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 出入国管理 / 移民 / 難民 / 国際社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に実施した研究の成果として次の二点が挙げられる。第一は「人の移動の国際政治:東アジア冷戦体制の形成と日本華僑」歴史学研究会編『歴史学研究』増刊号、2022年10月。第二は、「一九五〇年代の台湾出入境管制と「中国系難民」問題」泉水英計編著『近代国家と植民地性』御茶の水書房、2022年。第一の成果は代表者の既存研究を新たな観点から整理し直した大会報告論文である。第二の成果は、本科研プロジェクトにおいて主要な分析対象としている台湾の出入境管理の制度史的展開を法制と出入境統計から明らかにした論文である。このなかでは、1952年から57年にかけて台湾に入境・定着した者の過半が軍人身分を持つ「難民」であったことを明らかにし、その他の民間人身分の「難民」は主として香港地域から移入していたことを明らかにした。その上で、軍人身分を持つ者の入境は原則的には民間人が受けるような厳格な資格制限は設けられなかったものの、かれらの受け入れを決定するまでの過程で国際社会からの圧力が存在したことを示唆した。他方で民間人の場合、厳密に難民性の移入者として認められた人数は少なく、多くの場合は政府が国家建設に有用であると認めた人材に対して入境を許可していたことを明らかにした。このように、台湾の入境管理体制は自国民を対象に軍事的・政治的・経済的な有用性の観点でフィルタリングを行う制度として機能していたことを明らかにしたのが前記論文の研究意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年10月より22年3月まで、台湾政府より特別入国許可を取得して台湾中央研究院において在外研究を実施した。関係する研究者と懇談や研究会を実施し、今後の研究の方向性を確認したほか、この間に研究に必要な史資料を収集した。とくに50年代から60年代にかけて香港、ビルマ、タイ、ベトナム、韓国に滞留していた中国系難民をめぐる外交政策に関する史料を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに収集した史資料に基づいて、今後は制度から外交過程に分析の軸足を移していく。まずは香港に関係する史料を整理するとともに、初歩的な分析結果を国内の研究会・学会等の場で報告していくことを目標とする。あわせて、渡航が可能であれば冷戦期の中国系難民問題に関与したイギリス・アメリカの史料を収集するために海外史料調査を実施したい。
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Causes of Carryover |
研究費は主に旅費に使用したが、滞在期間の確定が年度終盤にずれ込んだため、差額が生じることとなった。残額は今年度における消耗品または旅費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)