2020 Fiscal Year Research-status Report
中国貴州省のミャオ族社会における「伝統的」衣装製作の再考
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19K20555
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Research Institution | Niigata University of International and Information Studies |
Principal Investigator |
佐藤 若菜 新潟国際情報大学, 国際学部, 准教授 (90788928)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民族衣装 / 刺繍 / 製作 / 技法 / 女性 / ミャオ族 / 少数民族 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、これまでの研究成果の公表と研究交流を重点的に行った。まず、昨年度末に出版した単著『衣装と生きる女性たち:ミャオ族の物質文化と母娘関係』(京都大学学術出版会)の内容について、研究者のみならずより多くの読者にむけて解説した。6月にはJapan Textile News(布と糸の文化の情報サイト)に当該著書の紹介文を提供し、9月には所属大学のスタッフセミナーにて解説し、2021年2月には京都大学東南アジア地域研究研究所のプログラム「ブックトーク・オン・アジア」にてインタビューを受け、その音声データがオンラインで公表された。このほか、各学術誌に掲載された当該著書に対する書評等を踏まえて、ミャオ族女性による衣装の良し悪しをめぐる判断基準をより明確にするために、衣装製作のみならずその着用場面を通して衣装の物質的特徴を捉えること、また、近年ミャオ族の衣装製作技術が他民族にも流出している事態をより詳細に明らかにするため、民族間関係や男性を含めた社会関係に関する聞き取り調査を行うことが、今後の課題として浮上した。これらの課題を踏まえながら、5月には日本文化人類学会第54回研究大会、10月にはアジア民族文化学会第39回大会、2021年2月にはワークショップ「装いと規範」およびSerial Academic Webiner「Cultural Transmission against Collective Amnesia: Bodies and Things in Heritage Practice」、3月には「装いの境界領域をめぐる人類学的研究」にて研究発表を行った。また、調査地の民族間関係についてまとめた単著論文「『民族』を変える人々:中国貴州省東南部のミャオ族と漢族の村の事例から」が2021年3月にアジア民族文化学会の機関誌『アジア民族文化研究』20号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、昨年度に実施できなかった中国での調査を今年度も中断せざるを得なかったが、学会やワークショップ等での口頭発表を精力的に行うことができた。また、昨年度に出版した単著に対する講評を踏まえて今後の課題をクリアにしたうえで、単著論文を公表することもできた。これらのことから、議論を進展させ、成果を公表し、調査・研究計画をさらに洗練させることができたという点では、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2019度に実施予定だった調査を、2021年度に実施予定の調査と合わせて遂行する。元々の計画にもとづき、中国貴州省のミャオ族女性(約50名)を対象に、年齢・出身地・母親の出身地・就学年数・出稼ぎでの就労年数・経済状況などに加え、習得している刺繍技法とその習得時期や習得過程を、聞き取り調査によって詳細に把握する。また、姉妹間や母子間、親戚間、隣人間ないし異民族間での衣装製作委託の実態についても調査を行う予定である。しかし、新型コロナウィルス感染症が終息しない場合には、これまで集めたデータや収集した文献をもとに研究成果の公表に注力する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、中国での調査が困難になったため、それにあてる予定だった旅費と人件費・謝金を使用することができなかった。また、研究発表を行った学会や研究会がすべてオンライン開催となったため、旅費を使用することができなかった。新型コロナウィルス感染症が終息した場合には、2019度に実施予定だった調査を、2021年度に実施予定の調査と合わせて遂行する。終息しない場合には、英文校閲費や報告書出版費用等にあてて、これまで集めたデータや文献をもとに研究成果を公表する予定である。
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Remarks |
口頭発表「自著『衣装と生きる女性たち:ミャオ族の物質文化と母娘関係』について」2020年度第3回新潟国際情報大学スタッフセミナー 2020年9月23日 口頭発表「ミャオ族女性の民族衣装にみる境界:中国貴州省の事例から」装いの境界領域をめぐる人類学的研究(第1回目) 2021年3月12日
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