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2023 Fiscal Year Research-status Report

中国貴州省のミャオ族社会における「伝統的」衣装製作の再考

Research Project

Project/Area Number 19K20555
Research InstitutionKyoto Women's University

Principal Investigator

佐藤 若菜  京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (90788928)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2025-03-31
Keywords手仕事 / 民族衣装 / 製作 / 技術 / ミャオ族 / 少数民族 / 中国 / 女性
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、中国貴州省のミャオ族女性による衣装製作が、当該社会においてどのような意味合いを有してきたのか、その内実と変化を捉えることにある。1980年代以降、威信財としての民族衣装がミャオ族女性全体に普及するなかで、それを製作することや製作技法を習得していることは、ミャオ族の社会や女性によっていかに位置づけられてきたのかを検討してきた。
初年度には、これまでの調査データをまとめて単著を出版し、衣装製作における分業化の進行と製作を通した女性の社会的評価(賢さ)について明らかにした。2020年度には、ミャオ族と他民族との関係や他民族への製作委託の現状について検討し、これに関する論文を学会誌『アジア民族文化研究』と英語書籍に寄稿し、前者は掲載・出版された。ミャオ族において衣装製作に長けていることは「賢い」と評価されるものの、一部では漢族といった他民族に衣装製作を委託していることを明らかにした。2023年度には、ミャオ族と他民族との関係を歴史資料からも分析し、学会で発表した。
2022-2023年度には、ミャオ族における機械刺繍の導入について分析し、衣装の大衆化に伴い、ミャオ族の衣装製作には異なる特徴を帯びた2つの手仕事(「手本の複製」と「見本からの創造」)が混在するようになったことを明らかにした。各刺繍の製作工程では、求められる能力が異なることを指摘したのである。2023年度には、この点をまとめた論文が、学会誌『文化人類学』に掲載された。
2020-2021年度には、展示品や商品としても扱われるようになった衣装について検討し、報告書と英語書籍(分担執筆)として公表した。2023年度には、衣装価値の変化をもたらした衣装収集について論文を執筆し、学会誌『arts/ 』に掲載された。このほか冠婚葬祭での衣装のやりとりについてもまとめ『世界の冠婚葬祭事典』(丸善出版)に掲載された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

中国への渡航にはビザの取得が必須となったこととも関連して、中国内陸部の少数民族地区である貴州省での調査は、現状、非常に困難である。2023年度も貴州省での調査を実施できなかった。だが、これまでの調査データを再度整理することによって、ミャオ族による衣装製作の変化(分業化、他民族への委託、機械化)とその社会的な評価について執筆し、公表してきた。2023年度には、議論をさらに進めて、手仕事の様々な性質について、査読つき論文としてまとめることができた。衣装の製作にも深く関わる、衣装の価値についてもその歴史的な変遷を論文にまとめることができた。以上のことから「おおむね順調に進展している」と判断した。

Strategy for Future Research Activity

今後は2019度と2021年度に実施予定だった中国貴州省での調査を2024年度に実施することを視野に入れつつ、中国国外に暮らすミャオ族へのインタビューも試みる。その際も、元々の計画にもとづき、ミャオ族女性を対象に、年齢・出身地・母親の出身地・就学年数・出稼ぎでの就労年数・経済状況などに加え、習得している刺繍技法とその習得時期や習得過程を、聞き取り調査によって詳細に把握する。また、姉妹間や母子間、親戚間、隣人間ないし異民族間での製作委託や分業化の実態についても調査を行う予定である。
同時に、これまで注目されてこなかったミャオ族の衣装(頭布)に関する論考や刺繍制作における図案の創造に関する論考、女性の「賢さ」に関する英語論文を執筆し、投稿する予定である。また、ミャオ族と他民族との関係について歴史資料から分析した論考も完成させる。さらに、中国国内の民族衣装展示の歴史についても執筆する予定である。

Causes of Carryover

ビザの取得や現地の大学による受け入れに関わる手続きが難航しており、中国貴州省での調査を実施できなかった。そのため、それにあてる予定だった旅費と人件費・謝金を使用することができなかった。2019度と2021年度に実施予定だった調査は2024年度に他の調査地も検討しながら実施する予定である。2024年度も渡航が困難な場合には、英文校閲費や報告書出版費等にあてて、これまで集めたデータや文献をもとに研究成果を公表する。

  • Research Products

    (10 results)

All 2024 2023 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (4 results) Book (1 results) Remarks (3 results)

  • [Journal Article] 民族衣装への部分的関心にもとづく収集:中国貴州省の事例から2024

    • Author(s)
      佐藤若菜
    • Journal Title

      arts/

      Volume: 40 Pages: 46-55

  • [Journal Article] 「手本の複製/見本からの創造」からみた手仕事の真正性:中国貴州省のミャオ族における手刺繍と機械刺繍の位置づけ2023

    • Author(s)
      佐藤若菜
    • Journal Title

      文化人類学

      Volume: 88(3) Pages: 505-522

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 断片化する民族衣装:収集から展示までの過程に着目して2023

    • Author(s)
      佐藤若菜
    • Organizer
      第39回民族藝術学会大会
  • [Presentation] 鳥居龍蔵の西南中国調査における2つの民族観:中国民族学界への影響に着目して2023

    • Author(s)
      佐藤若菜
    • Organizer
      日本文化人類学会第57回研究大会
  • [Presentation] 保存から商品開発へ: 中国における文化資源としての民族衣装2023

    • Author(s)
      佐藤若菜
    • Organizer
      装いの境界領域をめぐる人類学的研究
  • [Presentation] 刺繍教室は技術継承の場となりうるのか:中国少数民族の無形文化遺産をめぐる動きのなかで2023

    • Author(s)
      佐藤若菜
    • Organizer
      第26回「生きる文化遺産」研究会
  • [Book] 世界の冠婚葬祭事典(担当:第2章 東アジア 中国(ミャオ族))2023

    • Author(s)
      佐藤若菜(川田 牧人、松田 素二編)
    • Total Pages
      432
    • Publisher
      丸善出版
    • ISBN
      4621308416
  • [Remarks] 学会発表要旨「「プリント化」する伝統的手刺繍:中国貴州省ミャオ族の事例から」

    • URL

      https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasca/2022/0/2022_C04/_article/-char/ja

  • [Remarks] 学会発表要旨「鳥居龍蔵の西南中国調査における2つの民族観:中国民族学界への影響に着目して」

    • URL

      https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasca/2023/0/2023_B05/_article/-char/ja

  • [Remarks] 書籍紹介(英語)『衣装と生きる女性たち:ミャオ族の物質文化と母娘関係』

    • URL

      https://edit.cseas.kyoto-u.ac.jp/kyoto-area-studies-on-asia-in-japanese/40_sato/

URL: 

Published: 2024-12-25  

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