2020 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study of the Ethnoracial Self-images of Latin American Nations Represented in the Censuses in the Era of Multiculturalism
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19K20556
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
遠藤 健太 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 助教 (20825567)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラテンアメリカ / 国勢調査 / 多文化主義 / 人種・エスニシティ / アフロ系(黒人) / メキシコ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年には、アルゼンチン、エクアドル、メキシコ等で10年に1度の国勢調査が実施される予定であったため、今年度はこれら3か国の国勢調査に焦点を当て、各国における人種・エスニシティ統計の実施状況とそれをめぐる政治運動等の状況を比較分析する予定であった。しかし、上記のうちメキシコを除く2か国ではコロナ禍のため国勢調査が翌年に延期されることとなった。そのため、今年度はメキシコの国勢調査に専ら焦点を当て、人種・エスニシティ統計の実施状況とそれをめぐる政治情勢を詳細に分析した。その分析の概要は以下の通りである。 (1) メキシコの過去の全ての国勢調査(1895年~)の調査票を通時的に分析することで、とりわけ2000年以降に多文化主義的な傾向(=国内の人種・エスニシティ的な多様性の存在を公的に承認しようとする傾向)が顕著になってきたことを示した。そのうえで、2020年にはメキシコ国勢調査史上初めてアフロ系(黒人)の人口統計が実施されるに至ったという点に着目し、その歴史的意義を明確にした。 (2) こうした国勢調査における変化の背景となった、1990年代以降の多文化主義的な憲法改正の経緯をまとめた。とりわけ、2019年の憲法改正において(メキシコ憲法史上初めて)アフロ系の公的承認と権利の保障に関わる文言が盛り込まれたことに着目し、それをめぐる政治的・学術的議論を整理した。 (3) こうしたアフロ系の公的承認という傾向の背景で展開されてきた、アフロ系メキシコ人たちの政治運動の状況を、現地の報道やアフロ系団体のSNS等を情報源にして把握した。とりわけ、2020年国勢調査(におけるアフロ系人口統計の実施)に向けて国内のアフロ系団体が果たしてきた役割や、その結果として生じつつある国内のアフロ系の社会的地位の変容について考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、アルゼンチンとエクアドルでは2020年の国勢調査がコロナ禍により延期となってしまったため、今年度はこれらの事例を分析の対象外とした。しかし、その代わりにメキシコの事例に特化して詳細な分析を行ない、その結果として、多文化主義やアフロ系運動といった汎ラテンアメリカ的問題に関する一定の重要な知見を得ることができた。また、その研究成果を学会発表(2020年12月)と論文投稿(2021年5月刊行予定)との形で発表することもできた。
コロナ禍のために海外出張が一切できなくなったのは実に悔やまれるが、これを機に、現地調査に替わる調査手段としてのSNS分析というものに本格的に着手した。メキシコの政府機関やアフロ系団体などが発信していたツイッターの投稿と、それに反応する人々の投稿とを仔細に分析することで、「いま現地で起こっていること」の一端を浮き彫りにすることは可能であるという手応えを得た(もちろん現地調査の重要性に変わりはないが)。
つまり、コロナ禍によって研究計画に修正を迫られはしたものの、その修正の結果として研究の停滞は回避することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、①メキシコの多文化主義とアフロ系運動に関する分析を継続するとともに、②アルゼンチンやエクアドルの国勢調査が実施された場合にはそれらの分析に着手する。 次年度こそ現地調査を実施したいと切望しているが、万一コロナ禍の継続のためにそれが実現しなかったとしても、今年度中の工夫を通じて獲得した新しい手段(SNS分析やZoomインタビュー等)を駆使して研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により海外出張が一切できなくなってしまったほか、国内の学会や研究会も全てオンライン開催となってしまったため、旅費予算が執行できなかった。 遅くとも次年度の後半には海外出張ができる状況になると期待しており、そうなれば現地調査を積極的に実施する予定である。
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