2020 Fiscal Year Research-status Report
For peacebuilding: Role and contribution of rural society and connection between rural society and government
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19K20558
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
林 裕 福岡大学, 商学部, 准教授 (40779980)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アフガニスタン / 国際援助 / 平和構築 / 地域社会 / 都市部と農村部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平和構築という文脈で、アフガニスタンを事例に「地域社会が果たし得る貢献」は何かを問うものである。アフガニスタンは、1970年代以降、内戦、そして対テロ戦争の渦中に置かれてきた。現在、同国が私たちに提示するイメージは、「紛争国」である。紛争影響国としての同国では、崩壊した国家機能を地域社会が代替・補完するような役割を果たしてきた。そこで本研究では、既存研究で当然の前提となっていた「平和構築」「紛争影響国」が前提とするガバナンス構造を改めて問い直す。「平和構築」「紛争影響国」という概念こそが、不安定な政府のもとで地域社会が果してきた積極的な役割を覆い隠し、地域社会と中央政府との有機的連携をみえにくくしていた。本研究は、現地調査により同国の地方農民や元戦闘員、女性達、そして地域社会の在り様を詳細にみることで、地域社会と国家の相関関係を解明し、両者を結びつけるガバナンス構造を明らかにすることを企図している。 2020年は、COVID19の影響で現地調査ができない状況が続いたため、日本でできる研究を主として進めてきた。その成果の一端は、2021年3月には日本評論社より共著で本研究に関連する論文を出版し、平和構築という概念が覆い隠している「誰のための安全なのか」を論じた。併せて、明石書店より、共著で年度内に出版される予定である論文では、日本の対アフガニスタン援助、そしてその平和構築支援が抱える問題を論じた。 同時に、アフガニスタンの公用語であるダリー語に着目し、1980年代に出版された縄田先生の著作を使い、重要単語をレヴューすることを通じて、当時のアフガニスタンの生活と、現代アフガニスタンの様相との比較研究を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年12月以降のCOVID19パンデミック化の影響が非常に大きい。現地渡航並びに海外での学会発表が大きな影響を受けた。COVID19に起因する渡航制限により、研究自体においても大きな制約を受けている。本研究では、アフガニスタンカーブル州郡部における現地フィールドワークを主眼としていたが、日本側(所属大学福岡における度重なる緊急事態宣言からくる行動制限)およびアフガニスタン側(国内におけるCOVID19感染症対策等に起因する入国困難)の両面から現地渡航が非常に難しい状況にある。 研究期間内に現地への渡航ができるかどうかに大きく影響する研究者本人へのワクチン接種についても、予定が見えない。そこで、夏前を一つの目途として、現地渡航を完全に除外した研究方法に舵を切るかどうかを判断したい。 現地渡航ができそうな場合には、年度後半を念頭に、現地渡航に向けて準備をすすめる。他方、現地渡航ができなそうな場合には、遠隔で現地における調査協力者を選定し、代理で現地におけるインタビューを実施してもらう方向で調整したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年夏を目途に、渡航の可否(ワクチン接種も含め)を決定したい。 論文に関しては、2021年度までに2本を共著本のために執筆しているが、2021年度内で更なる積み上げを目指す。夏までは、文献等を利用した研究の蓄積に注力する。
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Causes of Carryover |
2019年12月以降パンデミックとなったCOVID19の影響により、アフガニスタン現地調査を後ろ倒しにしたために次年度使用額が生じた。
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