2022 Fiscal Year Research-status Report
For peacebuilding: Role and contribution of rural society and connection between rural society and government
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19K20558
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
林 裕 福岡大学, 商学部, 准教授 (40779980)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフガニスタン / 地域社会 / 平和構築 / 農村部 / 統治機構 / 地域ネットワーク / ディアスポラ / 紛争影響下 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度では、新型コロナウィルスの影響が続き、現地調査のための渡航が引き続き大きく阻害された。そのため、以下の2つの手法でアフガニスタンでの現地調査に代替した。(1)アフガニスタンにおける現地調査協力者によって、調査対象地であるカブール州北方へ出向いてもらい、現地でのフィールドワークを実施、(2)2021年8月15日、アフガニスタン・イスラム共和国が崩壊した後、米国内へと避難したアフガニスタン人へのアメリカ国内での聞き取り調査の実施。 (1)アフガニスタンにおける現地フィールドワークでは、調査対象地であるカブール州北方郡部(カラコン郡、ミルバチャコット郡)を、調査協力者が訪問し、現地での聞き取り面談調査を実施した。現地では、地域社会の在り様と中心に半構造化インタビュー調査を行った。同時に、共和国が崩壊した後の人々の暮らしぶりに関してインタビュー調査を実施した。地域社会の在り様に関しては、共和国からタリバン政権へと政治体制が変化したにもかかわらず、地域における統治機構の枠組みに大きな変化は確認されなかった。しかし、農村部における各家庭の生活状況については大きな変化が確認された。特に、家族の中で就労していた構成員の多くが職を失うと同時に、高騰する物価の影響が買う人された。 また、2021年8月15日以降、米国内へと避難したアフガニスタン人を対象として、イリノイ州、並びにウィスコンシン州を中心として、研究代表者本人による聞き取り調査を行った。両州での調査対象者たちの多くは、米軍によってアフガニスタンからの退避を支援され、ウィスコンシン州内の基地に当初収容され、そこから、両州内で、それぞれの生活拠点を立ち上げている段階であった。他方で、アフガニスタン国内の各自のルーツを持つ地域社会とは、親族、友人を通して、引き続き強いネットワークを維持していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響によって、現地への渡航が大きく阻害されていた。特に、航空運賃の高騰、入出国時のPCR検査の必要性並びに、PCR検査を現地で実施可能な医療機関の不足が大きな困難であった。 2021年8月15日のアフガニスタン・イスラム共和国の崩壊は、一時的に大きな困難をもたらした。具体的には、アフガニスタン査証の取得場所が判然としないことや、現地治安情勢である。アフガニスタン査証の取得場所については、在日本アフガニスタン大使館の構成が、イスラム共和国から、イスラム首長国へと切り替わる過程にあり、実際のアフガニスタン査証取得について、大きな困難があった。その後、アフガニスタン査証を取得する方策が次第に明らかになったものの、航空運賃の高騰が続いた。また、現地治安情勢については、2021年から2022年度を通じて、次第に現地情勢は安定化に向かったものの、現地に居住している調査協力者から、入国のタイミングならびに、安全を確保できる宿舎、そして移動手段について、慎重になることを求められたため、安易な拙速を避けることとしたため、アフガニスタン入国の時期を見諮らざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、2023年中には、現地調査協力者と密接に情報交換をしつつ、アフガニスタン入国を狙う。現地入りが可能になった際には、中央政府となったタリバン政権、そして、地方の行政機構の様子を確認すると同時に、タリバン政権復権から2年経過した後の地域社会、地域における司法の在り様、さらに、人々の生活の様子も調査していきたい。現在までの調査によって、タリバン政権後も引き続き現地農村部におけるインフォーマルな自己統治機構は変わらず機能していることがわかっている。そこで、地域社会が、いかに新たな政権と関係を取り結んでいるかを観察する絶好の機会となるはずである。 また、米国内へと避難したアフガニスタン人とも引き続き情報交換を密接に維持しつつ、避難民・米国へ移民となったアフガニスタン人たちと、地域社会との結びつきについても、情報収集を行っていく。必要に応じて、米国内での研究代表者による聞き取り調査も検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響、並びにフライト料金の高騰、そして、アフガニスタン政府の転覆とその後の治安情勢の流動化の影響が2022年度の予算執行に否定的な影響を与えた。本来であれば、2022年度中の現地渡航と現地調査の実施を計画していたが、諸条件を勘案し、総合的な判断として、現地渡航を見送ったため、2022年度全額の執行ができなかった。 2023年度では、現地渡航と現地でのフィールドワークの実施によって、全額の執行となる見込みである。
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