2020 Fiscal Year Research-status Report
家畜飼養と食肉習慣の変容から見るブータンにおける「食の主権」の構築
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19K20559
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| Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
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Principal Investigator |
小林 舞 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (30782297)
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2019-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | 食の主権 / アグロエコロジー / ブータン / 有機農業 / 農業技術支援 / 農業技術開発 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
ブータンは、インドと中国に挟まれた地政学的状況の下で、国家政策として仏教思想を軸とする国民総幸福度(GNH)や森林保護を唱え、進歩的で多面的な開発政策や制度を進めてきた。本研究は国家主導の有機農業政策と現実的な近代化政策との合間におかれた小規模家族農家がいかに柔軟にそれに対応しているかを実証的に辿り、家畜飼養と食肉習慣の変容に焦点を当て、よりアグロエコロジカルな食農体系がどのように築かれうるかについて考察することを目的としている。
本年度は新型コロナウイルスによる渡航制限により、フィールド調査が不可能であったため、これまでに収集したデータ、そして、オンラインのインタビューなどを通して収集した情報を元に調査を進めることとした。研究成果としては、アグロエコロジカルな食農体系の構築に関連し、アグロエコロジーの原理を基準としたアセスメント・ツールをアグロエコロジーの第一人者であるクララ・ニコールズ氏、ミゲル・アルティエリ氏との共著論文として学術誌AgroSurより投稿をした（Nicolls et al., 2020）。また、龍谷大学の西川芳昭教授、Coventry 大学のMichael Pimbert教授編でPalgrave Macmillan社より出版予定である「Diverse Strategies for Enhancing Seed System Resilience(仮)」の一章を分担執筆し、種子開発の近代史から見るブータンの食と農の変容について論じた。2019年2月に収集したデータを利用し、ブータンにおける食習慣の多様性とその変貌が農村及び都市部の食文化・アイデンティティ形成にどう作用しているのかを本としてまとめ、総合地球環境学研究所より出版した。
また研究成果の発表としては、ブータンにおける食肉習慣の変容についての調査内容は第4回アジア太平洋圏の食農倫理学会大会(2020年12月３日-16日)、そしてアメリカ地理学会（2020年4月7日-11日）にて口頭発表を行なった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ブータンの家畜と食肉習慣の変遷を通して、「食の主権」が構築されていくプロセスを把握するべく、４地域を中心とした農民と都市住民の食習慣、そして農業省の政府役員、種苗会社、精肉屋や研究者への聞き取り調査を進めてきた。しかし、コロナパンデミックの影響で、本年度は調査が実践不可能であったことから、2019年11月までに収集したデータを利用し、ブータンにおける食習慣の変貌が農村及び都市部の食文化・アイデンティティ形成にどう作用しているのかを、質的データ分析(QDA)手法などを用いて、解析を現在も進めている。その結果の一部は、本として出版された。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、これまでの調査で蓄積したデータの解析を進め、学術論文、及び編著本の出版を進める。ブータンにおける食習慣の多様性とその変貌についての調査を引き続き現地の共同研究者の協力を得て、リモートで行う予定である。その内容は、多言語本の編集版として出版する予定である。コロナパンデミックの影響で、海外フィールド調査の再開の目処が立たない状況にあるが、ブータンにおける「食の主権」の構築について、中央主導型政策の動向と近隣諸国との貿易協定、農業技術支援、企業及び海外直接投資と流通の関連から検討するには、興味深い状況となっている。引き続き、遠方からの調査・解析をつづけることとなるが、近隣諸国との国境が閉鎖されることで、より顕著になるフードシステム上の複合的危機と食料安全保障強化の必要性について、可能な限り多様な視点と取り組みを通して明らかにしていきたい。
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| Causes of Carryover |
ブータンでのフィールド調査は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、不可能となった。そのため、経費利用は主に書籍の購入、学会やセミナーへの参加費、ブータンにおける有機稲作プロジェクトを進めている民間稲作研究所との打ち合わせ、そして、ブータンへの書籍発送に使われた。次年度は、可能であればブータン渡航費、そして、海外フィールド調査の再開の目処が立たないため、現地における共同研究者との委託調査費、そして、学術論文、編著本、及び本の出版に当てる計画である。
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Research Products
(5 results)
