2019 Fiscal Year Research-status Report
Study Tour for Promoting Tourist's Participation in Community Development
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19K20564
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
Ho QuangBach 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (90802893)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ツーリズム / 地域づくり / 持続可能性 / 関係人口 / ウェルビーイング / 態度変容 / サービスマーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スタディツアーにおける学習が旅行者の地域づくりへの参加に与える影響を明らかにすることである。スタディツアーとは旅行者が訪問地域の住民と交流しながら地域の特色や課題について体験的に学習する観光形態を指し、地域づくりの担い手不足の解消に寄与することが期待される。初年度である令和1年度は、旅行者の地域づくりへの参加意向を表す概念を明らかにするために、文献調査及び聞き取り調査を実施した。 分析結果から、旅行者の地域づくりへの参加意向は、(i)ツアーにおける旅行者の学習経験、(ii)学習を通じた旅行者の能力の向上、(iii)旅行者と住民の関係性の変容の三要因を統合することによって表現できることを明らかにした。(i)に関しては、旅行者がどのような学習をしたかという観点から、暗黙知を獲得することに重きを置いた学習過程である暗黙的学習と形式知の習得を目的とした学習過程である明示的学習という分類からツアーにおける学習経験を整理する。知識の側面からツアーにおける学習過程を類型化することにより、訪問地域などの外部要因に依存せずに分析できる。(ii)に関しては、旅行者が地域づくりに貢献できるという認知である自己効力感と交流した住民と関わり合いながら暮らしたいという認知である共同体感覚の二つの軸から整理する。自己効力感のみが高いと独りよがりな参画に陥る恐れがあり、反対に共同体感覚のみが高くても内的な参加意向に留まって実際の行動に繋がらないことが多い。そのため、ツアーを通じて旅行者がこれら二要素の両方を同時に高めることが重要である。(iii)に関しては、旅行者と住民のどちらか一方だけではなく、両者のウェルビーイングが同時に達成される関係性を築くことが重要となる。これらの研究成果は、地域外の人(旅行者)に対する地域づくりへの参加を促すツーリズムに応用することができるため意義が大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、初年度である令和1年度の研究課題として旅行者の地域づくりへの参加意向を表す概念を同定することを設定し、次年度に実施する調査のための論点を整理することを目指していた。分析結果から旅行者の地域づくりへの参加意向が三つの要因を統合することによって表現できることを明らかにし、既に次年度調査のための質問票の作成に取りかかっている。最終年度である次年度では、文献調査及び聞き取り調査を継続しながら作業仮説を洗練し、旅行者を対象とした質問紙調査によって仮説検証をおこなう予定である。また、初年度の後半において、それまでに得られた結果を国際会議にてサービス研究分野の研究者や実務家と話題共有・意見交換し、類似分野の文献紹介を受けたことで次年度に実施する文献調査のための持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)という新たな視点が得られた。以上の観点から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度では、令和1年度で得られた成果を基に質問紙調査を実施し、スタディツアーにおける学習が旅行者の地域づくりへの参加に与える影響を同定することを目指す。令和1年度では地域づくりへの参加意向を表す概念の表現に注視していた一方で、令和2年度ではスタディツアーの学習内容(ツアーコンテンツ)についても分析を進める。そのために、文献調査及び聞き取り調査を継続することでツアーコンテンツの類型化方法を明らかにすることにより、作業仮説をさらに洗練させる。文献調査においてはEducation for Sustainable Developmentにおける理論枠組みが参考になる。しかし、当該分野は大学教育を主な対象としており、ツーリズムに援用する際にはその差異について考察する必要がある。質問紙調査では、旅行者の地域づくりへの参加を促し易いツアーを選定し、ツアーコンテンツと地域づくりへの参加意向のそれぞれの要因間の関係性を明らかにする。また、年度の後半では国内外の学術会議にて研究成果を発表して議論を深め、国際ジャーナルへの論文投稿に繋げる。
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Causes of Carryover |
3月に予定されていた国際会議が疫病の発生により中止になった。また、聞き取り調査の対象者の都合が合わなくなり、調査日程が延期となったことで次年度使用額が生じた。これらの研究費は次年度に開催される国際会議への参加費や文献調査のための資料購入費に使用する。
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Research Products
(6 results)