2022 Fiscal Year Research-status Report
日比間の在留資格「興行」の成立と運用の解明―入国管理のジェンダー分析に向けて
Project/Area Number |
19K20580
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大野 聖良 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(RPD) (20725915)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 興行 / 入国管理 / フィリピン / 移住女性 / 招聘業界 / NGO |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、在留資格「興行」の制度化と帰省を取り巻くアクターの言説に注目し、移住女性のジェンダーやセクシュアリティを規定しながら、それらの言説が女性たちの移動と就労を形成してきたかを明らかにする研究であり、本年度は、夏季に、フィリピンの政府機関やNGOでの資料収集・インタビュー調査と論文投稿等の研究成果の発信を行う予定であった。前者については、新型コロナウィルスに罹患し、一定期間にわたり副作用で体調がすぐれなかったため、フィリピンでの調査を遂行することができなかった。後者については、これまで実施してきた日本の招聘業界と人身取引問題をめぐる日本政府とNGOの動向を分析し、研究成果として投稿論文や学会報告で発表した。具体的には、日本最大の招聘業界団体(2005年当時)のニューズレターを中心に、招聘業界において外国籍女性(フィリピン女性)の興行がどのように語られていたのかを分析し、特に「接待」をめぐる入管との攻防とそれらの議論におけるエンターテイナー女性の不在について明らかにした。この研究成果は、日本女性学会2022年度大会での研究報告や日本移民学会『移民研究年報』で研究論文(掲載決定)として発表した。また、日本における人身取引問題においてエンターティナーをはじめとした外国籍女性の被害の言説がどのように変遷したのかを、政府による『人身取引年次報告書』を用いて考察し、「ホステス業」に従事する外国籍女性の被害が人身取引対策でどのように位置づけられているのかを明らかにした。これについては、インドネシア大学・アジア女性学会共催のシンポジウム(オンライン)で研究発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
夏季に予定していたフィリピンへの調査が新型コロナウィルスの罹患によって実施不可能となったため、フィリピンで収集予定であった政府機関やNGOの資料や学術雑誌記事等を追加収集できなかったため、フィリピン社会の「興行」をめぐる言説分析のさらなる展開が難しく、その点で進捗状況にやや遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は再度フィリピンへの調査を計画・実施し、資料の追加収集を行い、フィリピン社会における「興行」言説の分析をすすめる予定である。これまで実施した日本の入管と招聘業界の「興行」言説の考察と合わせて、在留資格「興行」からみる入国管理のジェンダー分析を完成させたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスに罹患し、回復後も長期間体調不良になり、国内外での調査を実施することが容易ではなかったため、当初計画していた旅費や人件費(インタビュー謝金、翻訳・通訳への謝礼・録音反訳への謝金)が発生しなかった。次年度は、本年度に計画していた調査を実施する予定であり、それによって生ずる旅費・人件費として助成金を使用する。また、国外への研究発表のための翻訳・英語校閲としても使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)