2020 Fiscal Year Research-status Report
Discourse analysis of postwar gender politics on Joryu-gaka (women artists)
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19K20582
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中嶋 泉 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (30737094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 女性美術家 / 近代美術 / 現代美術 / 日本美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「女流画家」という現象が、第二次世界大戦後の日本の女性運動においてどのような意味を付与され、また機能していたかを、美術、大衆文化、占領政策などの言説分析を通じて明らかにすることを目的としている。 2020年度前半は、初年度である2019年度に引き続き、各美術館図書館、国会図書館、国立公文書館、東京文化財研究所等の国内の機関において終戦後、占領期における「女流画家」の 言説にかかわる資料(書籍、雑誌記事、新聞記事等)を収集し、分析した。同年度はさらに、米国における調査を予定していたが、新型肺炎感染拡大の影響により、渡米することができずにこの計画を遂行することができなかった。 そこで、次年度も状況の改善が見込めないことを考え、下記「今後の研究の推進方策」に記載した通り研究の方針および内容を変更し、2020年度後半はその準備を開始した。具体的には、各美術館図書館、国会図書館、国立公文書館、東京文化財研究所等の国内の機関において1940、50年代の女性美術家の発表展示活動やそれに対する批評、受容について調査を行い、関連する資料の有無を調べるとともに、展覧会関連資料を収集した。また、女性美術家のアーカイヴに関する知見を蓄えるために、類似の活動を行うフランスの機関、Archives of Women Artists, Research and Exhibitionsとの協働を開始し、国内の研究者の協力を得て、日本の女性美術家のバイオグラフィーの編纂を行った。さらに日本の前衛芸術と女性美術家の関係についての学術的考察を行うための資料収集および理論構築のための文献調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型肺炎拡大による海外への渡航困難のため、予定していた研究機関での調査が不可能だった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型肺炎の拡大に伴い、今年度も海外渡航が難しい状況が続くことが予想される。そのため、米国での調査が重要な当初の研究計画から内容を変更し、次のような研究にシフトする。 当初計画に変わって、本研究は、女性の画家、彫刻家、写真家、映像作家、パフォーマーらの活動について、1940年代から1990年代を対象に資料調査と収集を行い、フェミニズム美術史の観点から女性美術家のアーカイヴを構築し、フェミニズム美術史に関する基礎文献―資料集、研究書などの刊行によって、その研究基盤を整備することを目的とする。具体的には、1)展覧会図録や当時の批評、チラシなどの一次資料の収集、作家や関係者への聞き取り調査、およびデータベース作成とアーカイヴの構築、2)資料の分析と理論的整理、および日本現代フェミニズム美術史の編纂、執筆の二つの工程にわけられる。 本研究は、当初計画していた研究に続く研究として予定していたものだが、国内での調査を中心に行うことができることから、先に遂行するものである。本年度は、2021年度に予定している1)の資料収集とアーカイヴィングを中心に実施することを予定している。まず、2020年度にすでに着手した、1940、50年代の女性美術家の図書、展覧会関連情報等の資料を拡充するかたちで、1960-90年代の女性美術家に関する資料の収集につとめる。また前年度から継続して、AWAREをはじめとする関連機関との協働により女性美術家のアーカイヴを構築するための調査と研究を行う。また研究協力者を招聘し、アーカイヴ構築のためのワークショップおよび聞き取り調査を行う。
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Causes of Carryover |
新型肺炎拡大による海外への渡航困難のため、海外での研究のための旅費に予定していた額の執行ができなかったため。次年度においては、上記した新たな研究計画のもと、物品購入に加え、アーカイヴ構築、ウェブサイトの開設、旅費等に予算を費やす計画である。
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