2021 Fiscal Year Research-status Report
Discourse analysis of postwar gender politics on Joryu-gaka (women artists)
Project/Area Number |
19K20582
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中嶋 泉 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (30737094)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 女性美術家 / フェミニズム / アート / ジェンダー / アーカイヴ / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型肺炎の拡大に伴い、今年度も海外渡航が難しい状況が続くことが予想されたため、米国での調査が重要な当初の研究計画から内容を変更し、次のような研究にシフトした。 当初計画に変わって、本研究は、女性の画家、彫刻家、写真家、映像作家、パフォーマーらの活動について、1940年代から1990年代を対象に資料調査と収集を行い、フェミニズム美術史の観点から女性美術家のアーカイヴを構築し、フェミニズム美術史に関する基礎文献―資料集、研究書などの刊行によって、その研究基盤を整備することを目的とする。具体的には、1)展覧会図録や当時の批評、チラシなどの一次資料の収集、作家や関係者への聞き取り調査、およびデータベース作成とアーカイヴの構築、2)資料の分析と理論的整理、および日本現代フェミニズム美術史の編纂、執筆の二つの工程にわけられる。 本研究は、当初計画していた研究に続く研究として予定していたものだが、国内での調査を中心に行うことができることから、先に遂行するものである。 本年度は、1)の展覧会図録や一次資料の収集に尽力し、各地の美術館、美術館図書館等で、主に60、70年代および90年代の資料を集めた。また、2021年4月に北原恵氏、徐潤雅氏らと「フェミニズム&アート研究プロジェクト」を発足し、8月には第1回研究会「アートとアーカイヴ」を開催した。これにより、本研究が目指すフェミニズム美術のアーカイヴ作成にかかわる技術や知識を得ることができた。 また前年度から継続して、AWARE(Archives of Women Artists, Research and Exhibitions)をはじめとする関連機関との協働により女性美術家のアーカイヴを構築するための調査と研究を行った。執筆者に日本の女性美術家のバイオグラフィーの執筆を依頼し、翻訳、編集を経たうえで、AWAREのウェブサイトに掲載した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、様々な定期刊行物で女性美術家の特集が組まれ、フェミニズムと美術に関する展覧会、重要な女性美術かの展覧会が多く開催されるなど、フェミニズム美術の調査、研究である本研究を推進するよい調査環境に恵まれた。代表者も『美術手帖』の特集に寄稿するなどして、この流れに貢献することができた。またそれぞれの展覧会を機会に、これまで入手困難だった、女性美術家の作品集や展覧会図録などを収集することができ、資料体の基盤をつくりあげることができた。 また、2021年4月に「フェミニズム&アート研究プロジェクト」を発足したため、研究会やミーティングを通じて多くの研究者、アーティストの協力を得ることができた。同プロジェクトでは、今後、メンバーやほかの協力者から、フェミニズムとアートに関連する書誌情報などを得ることができ有益な資料収集へと繋がった。 これらの調査、研究は、本年度中に、美術家との対談、一般誌への寄稿、非アカデミックな聴衆への講演(研究業績参照)に繋がり、社会還元の度合いの高い研究となったと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)引き続きフェミニズムと美術に関連する書籍、イベント・展覧会告知ちらし等、展覧会評などを収集する。今年度は1970から80年代の展覧会調査に集中する。年度後期に、これらの資料がある程度の量がまとまったら、データベース化を進め、検索できるシステムを構築する。 2)「フェミニズム&アート研究プロジェクト」にて、フェミニズムと美術に関連する研究会、ワークショップを開催する。今後の展開として、イトー・ターリの遺品に関する調査の発表会、英語圏の研究者による日本美術に関する研究会等を企画している。 3)昨年に引き続き、AWAREの女性美術家バイオグラフィーアーカイヴの作成に携わる。代表者は日本美術において活躍した女性アーティストのバイオグラフィーの執筆者を選定し、翻訳、編集作業に携わる。研究結果はAWAREのウェブサイトにて公開される。 4) 日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴの活動の一環としておこなっている女性美術家のインタヴュー松本路子、出光真子)を公開し、また新たに80年代美術の流れに貢献した女性美術家のインタヴューを行い、公開する。
|
Causes of Carryover |
新型肺炎予防のため、出張による経費が抑えられたため。
|
Research Products
(6 results)