2019 Fiscal Year Research-status Report
バイオ資本主義における子産みの統治性:生命と身体の資源化をめぐる統治技法の分析
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19K20585
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山本 由美子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 講師 (20716435)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生資本 / 生権力・生政治 / 身体 / 生体組織 / 資本主義 / 自律性 / バイオテクノロジー / 統治性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は文献研究に注力することとなった。共著図書1件(担当部分単著)、国内調査1件の実績となった。 本研究の目的は、生命や身体の資源化をめぐる生政治とその統治技法について、「再生産(生殖/中絶)」・生命科学・資本主義の「共生産」の関係を明らかにし、妊婦身体と中絶胎児に焦点をあてた生資本論の理論的枠組みを構築することである。再生産をめぐる経済活動と生命科学の交差する部分を前景化すべく、遺伝子研究における検体収集のありよう、女性の主体性、産科医療と企業の連携について文献調査を進めた。その過程で、遺伝子をめぐる進化論と分子生物学の領域まで調査範囲を広げる必要性が生じ、論点を統合および整理している。また、東海地方の胞衣業者に聞き取り調査を実施することができた。 女性の主体性と新出生前検査の関係は、認知資本主義と投機の関係を分析することで、市場化された医療を浮き彫りにすることができる。そこでは「安心」という情報を購入していることになるが、付加価値を誰がどのようにつけているかは、生命科学と経済活動が交差するところだけでなく、それらをパラレルに稼働させる統治性を明らかにすることで、マクロな統治の力学を理論化できることが分かった。 生殖をめぐるバイオテクノロジーと生の統治の研究については、フーコーの生政治をいかにして乗り越える技法を見いだすかにかかっている。バイオ研究における資本創生を主眼とした動向を批判的に検討し、生命と遺伝子および身体そのものの生きるポテンシャルを明確に理論化することが今後も本研究の主軸となっていくはずである。 今年度は数点の草稿に留まっているが、次年度以降に公刊の見込みは十分にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査の過程で、進化論や分子生物学の領域まで調査範囲を広げる必要があることが分かり、ひとつの収穫ではあったが原稿執筆は遅れることとなった。また、国内外調査はかかる時世(COVID-19)で延期となり、次年度以降の実施を予定することとなった。これらのため、論文を年度内に完成するに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
論文は執筆中の草稿が数本あり、次年度以降に公刊の見込みである。かかる時世の終息状況の如何により、調査研究については、全面的に文献研究に移行する必要性が生ずることを考慮しておく。
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Causes of Carryover |
国内外調査を延期したため。 時世の事態の終息状況に合わせて、可能であればただちに現地調査を進める。実施困難な場合は文献調査に全面的にシフトチェンジし、大型図書等の購入や論文投稿料および英文校正料等に使用したい。
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Research Products
(2 results)