2020 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダー・性的指向に依存した性的刺激への認知,行動,生理メカニズムの解明
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19K20591
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 麻衣子 早稲田大学, 理工学術院, 客員次席研究員(研究院客員講師) (10802580)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 性的指向 / ジェンダー / 多様性 / SOGI |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新型コロナウイルスの影響で,所属大学の方針上,ヒトを対象とした対面での実験は実施できなかった。そのため,実験方式をオンラインへと切り替え,データ収集に勤めた。オンライン実験では,ジェンダーアイデンティティという心と体の性を測定する心理尺度の日本語訳を完了させ,学生を対象とした予備実験を実施した。今後,本実験を進め,ジェンダーアイデンティティ尺度の翻訳論文を出版予定である。また,アウトリーチ活動にも注力し,日本科学未来館でのオンラインイベントを実施し,子どもを対象とした心と体の性に関する実験イベントを実施した。オンラインでの実験イベントは日本科学未来館,研究者ともに初めての活動であったが,今後withコロナ時代においてオンラインを活用したアウトリーチ活動により,日本だけでなく世界中とコミュニケーションを取れる新しいイベント方式として確立できたと考えている。イベントへの参加者は,小学校中学年から高学年とその保護者が主であった。思春期初期に該当するイベント参加者らとその保護者に対して多様な性に関する研究の現状と社会のあり方を伝えることができたことは,非常に有意義であったと考えている。今後も積極的にアウトリーチ活動やLGBT当事者との交流を通じて研究と実社会の架け橋となる活動を行なっていく。 研究実績としては,日本認知心理学会での学会発表(セクシュアリティによる性的刺激への反応特性の違い―生物学的性と性的指向の影響 )を行なった。加えて,英文雑誌,Evolutionary Psychological Scienceに「Sex Differences in the Motivation for Viewing Sexually Arousing Images」が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅延している大きな要因は,新型コロナウイルスによる研究活動の大幅な制限である。例えば,所属研究室では,対面での実験が昨年度の期間は一度も実施できなかった。また,所属研究室が都内であるため,度重なる緊急事態宣言発令のたびに,大学への出勤が制限され,大学に設置されている研究機材の使用ができない状況が続いた。 本研究はLGBTというセンシティブな当事者を対象とすることから,研究に際して研究内容や波及効果に関して丁寧に説明の上参加に同意してもらうといったフローを使用している。本研究の特性上,最終的にはLGBT当事者支援を目指しているため,研究の説明はLGBT当事者との信頼関係を築く上で最も大切な事項であり,オンラインで行うことはできなかった。 加えて,本研究は実験の刺激として性的な写真を使用することが多い。オンラインで性的な実験刺激を提示した際に,実験参加者がスクリーンショットの撮影を行なったり,実験参加者が公共施設で実験を行なっていた場合,実験参加者以外の他者の目に不可抗力的に実験刺激が晒される可能性がありリスク回避の観点から避けるべきと考えた。従って,新型コロナウイルス感染拡大以前に予定していた実験ではなく,実験手法をオンライにて実施できるものに改訂する必要があった。このような対応に追われたため,実験の一部に遅れが見られる。今後,対面での実験が許可された時のために,当初予定していた実験システムも維持しつつ,代替となる新しい実験手法に関しても開発していきたいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
withコロナ時代を見据えて,対面での実験とオンラインでの実験を2つの柱として実験を行なう。ただし,本研究はLGBTや性的な刺激を使用するといった特性上,研究の参加者の方には通常以上に研究内容の理解と実験参加の同意を確認する必要がある。研究倫理や実験参加者の同意に関して十分に配慮した上で,研究をオンラインで実施できるように整備を進める。加えて,研究計画の中でオンラインに移行可能なものを精査し,速やかにオンライン実験への改訂を進めている。オンライン実験ではGorillaというオンライン実験プラットフォームを活用しており,実験システムが対面実験同様に活用できることは確認済みである。 日本科学未来館を活用したアウトリーチ活動も予定しており,緊急事態宣言発令などの問題がなければ7月終わりから8月初めにかけて,ジェンダー多様性に関するイベントを予定している。研究対象は小学生とその保護者を予定しており,内容は心理実験の体験と,ジェンダー多様性研究の最前線,日本国におけるジェンダーの扱い方に関する講義を予定している。次世代とその保護者に対し最新のジェンダーの考え方を伝え,ジェンダーに関する理解を深められたらと考えている。 最後に,緊急事態宣言発令時は実験データの解析や論文執筆作業に注力し,論文のアクセプトを目指して作業を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため,予定していた海外出張や対面での実験が全て中止となった。そのため,対面実験で発生する予定であった謝金などが全て持ち越しとなった。2021年度は一部対面実験も実施予定なので,積極的に実験を行いデータ収集に努めたい。
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Research Products
(2 results)