2019 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮戦争日系アメリカ人兵士の実証研究:エスニシティとジェンダーに着目して
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19K20594
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
臺丸谷 美幸 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 講師 (40755394)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー / エスニシティ / 日系アメリカ人兵士 / 朝鮮戦争 / 日系人強制立ち退き・収容問題 / 日系二世 / 市民権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、朝鮮戦争期の日系アメリカ人による従軍経験と、1950年代の米国と東アジアにおける日系人兵士の社会的立場の解明にある。本研究の意義は、朝鮮戦争期の日系人兵士の従軍経験を基に、1950年代における米国の対東アジア政策を再検討することにある。さらに日系人兵士に着目することで、当時の軍隊における人種統合とジェンダー平等推進の経緯を東西冷戦体制という政治的文脈から考察することが可能となる。 2019年度の主な成果としては、カリフォルニア州での17日間のフィールド調査が挙げられる。米国西海岸出身の日系二世の朝鮮戦争退役軍人を対象に、インタビューを実施した。特に1.朝鮮戦争の従軍は、彼ら/彼女らの日系人強制立ち退き収容以後の社会(再)参入といかに結実していたのか。2.ロサンゼルスの日系人街で毎年8月開催の二世ウィークにおける、退役軍人パレードのイベントに同行し、日系退役軍人の活動を通して見られる、彼らの東アジア認識や日系二世観とはいかなるものであるか、この2点について調査した。 今後の展望として、先の調査の成果を論文としてまとめるとともに、人種/エスニシティやジェンダーの比較検討の研究に着手する。具体的には朝鮮戦争期の日系人兵士とアフリカ系アメリカ人兵士との従軍経験を比較検討する。特に同時代の公民権運動の高揚がそれぞれの兵士の待遇にいかなる影響を与えたのかを人種間の闘争などにも留意しながら検討する。ジェンダー視点では男性と女性の従軍経験の比較検討に加え、二世の女性と他のアジア系女性や他のエスニシティの女性の従軍経験と比較検討する。そして軍の任務は彼女たちのキャリア形成といかに結び付いたのかを考察する。手法としてはこれまで収集したインタビュー資料と文書資料に加え、当時の新聞や雑誌、映画・小説など入手可能な資料で言説・表象分析を中心に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年は当初の計画通り、カリフォルニア州でのインタビュー調査の実施、国際会議での2度の成果発表を行うことができた。2020年はこれらの成果を論文としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はインタビュー調査、文書資料収集のために米国ハワイへの渡航を計画していたが、しばらくは海外での研究活動は延期せざるを得ない。これまで収集したインタビュー資料、文書資料を基に、今後の研究を進めることは十分可能であると判断しており、2020年度は論文執筆に多くの時間を費やしたい。新聞記事分析などを中心に、特に朝鮮戦争期の日系アメリカ人兵士と同時代に従軍したアフリカ系アメリカ人兵士の比較検討に焦点を当て、同時代の日系アメリカ人の従軍の背景としての公民権問題について検討したい。
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Causes of Carryover |
2019年11月段階では、それまでの研究計画より早めて、当該研究の中間報告的位置づけにあたる研究報告を、2020年3月に米国ネバダ州開催予定であったSouthwest Oral History Association(南西部オーラルヒストリー学会:SOHA)にて行う計画であった。この出張旅費に充当するため前倒し請求を行ったが、2020年1月頃からの世界的な新型コロナウィルス流行と感染拡大に鑑み、学会への応募自体を見送ることとした。今後も海外出張は厳しいと予測されることから、この請求分は英語論文執筆時の校閲料への使用を計画している。
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