2020 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮戦争日系アメリカ人兵士の実証研究:エスニシティとジェンダーに着目して
Project/Area Number |
19K20594
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
臺丸谷 美幸 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 講師 (40755394)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー / エスニシティ / 日系アメリカ人兵士 / 朝鮮戦争 / 日系人強制立ち退き・収容問題 / 日系二世 / 市民権 / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、朝鮮戦争期の日系アメリカ人兵士(二世兵士)の社会的立場の解明である。米国カリフォルニア州の出身者を中心に日系二世の退役軍人へのインタビュー調査と、新聞等のメディア分析を基に考察する。 2020年度の主な成果は次の2点に集約される。①1950年代当時の米国メディアにおける朝鮮戦争期の日系二世兵士像の分析と解明、②朝鮮戦争期のアフリカ系アメリカ人兵士の社会的立場との比較検討である。①は日系市民協会(JACL)の機関紙であるPacific Citizen(PC)の記事分析を行い、本紙における1950年代の朝鮮戦争期の二世兵士像に迫った。JACLの日系二世リーダーたちは、PCを通して朝鮮戦争下の二世兵士の犠牲を悼み、彼らの軍事的功績を称えることで、当時の二世男性全体の忠誠心や愛国心を喧伝しようと試みた。しかし、朝鮮戦争が休戦という結末を迎えることで、次第に朝鮮戦争期の二世兵士に力強いイメージを付与することは叶わなくなった。②は、米軍におけるエスニック・マイノリティとしては当時より最大数であったアフリカ系アメリカ人兵士の境遇と比較検討することで、1940年代後半から1950年代前半頃の米軍における人種平等政策の実施状況、その背景にある冷戦政策、また人種間での緊張関係について考察した。そして米国社会における構造的レイシズムこそが人種マイノリティを序列、差異化し、常にエスニック・マイノリティ同士を緊張関係に置くことで強化してきたと論じた。これらの研究成果は、国際学会(2件)と国内学会(2件)にて口頭発表を行った。 来年度は、今年度の成果を基にした研究論文の執筆に注力したい。来年度も海外でのフィールド調査は困難であることが予測されるため、引き続きこれまでの収集したインタビューデータ、文書資料の整理・分析と、新聞や雑誌、映画、小説などのメディア分析を中心に研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、海外調査を実施できない状況が続いている。日系二世の退役軍人を対象とするインタビュー調査は、対面での実施は困難ではあるが、対象者が90歳を超える高齢者が大半であるという事情も踏まえ、メール、電話、手紙等での追加調査を継続して行っていくことで進捗させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も今年度同様、海外での調査は困難であることから、これまでのフィールド調査で入手した資料や、インタビュー対象者への遠隔での追加調査を継続することにより、資料整理・分析を進めたい。昨年度からの方針同様、国内で収集できる新聞等のメディア分析を研究の中心として、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き世界的な新型コロナウィルス流行と感染拡大のため、海外でのフィールド調査はすべて中止となり、外国への旅費と現地での資料収集、閲覧料等の費用がかからなかったため。次年度も海外出張は厳しいと予測されることから、国内出張費、オンライン学会への参加料、英語論文執筆時の校閲料としての使用を計画している。
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Research Products
(4 results)