2020 Fiscal Year Research-status Report
時空間制御されたレーザー航跡場による電子ビーム発生
Project/Area Number |
19K20597
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
大塚 崇光 宇都宮大学, 工学部, 助教 (30815709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザー航跡場加速 / 超短パルスレーザー / 電子ビーム / プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では本来光の速度で伝搬する集光面の速度を制御することにより,電子が加速位相から脱する長さ(脱位相長)を制御するレーザー航跡場加速における新しい基盤技術を開発することを目標としている.令和2年度は前年度に開発した計測器を用いてプラズマ計測を行ない,前年度に引き続き一部の計測器の開発を行なった. 1 TW Ti:Sapphire レーザーシステムから射出されたレーザーパルス(最大エネルギー 120 mJ,パルス幅 120 fs,波長 800 nm)を非軸放物面鏡により幅 1 mm のガスジェットターゲットに集光照射し航跡場を励起した.本研究では低エネルギーレーザーで効率良く電子を加速場に入射させ加速することが重要となるため,その条件を明らかにするためガスジェットターゲット上にブレードを挿入しガスジェット標的内に密度変調を生じさせた.レーザーパルスの一部をビームスプリッタで分岐しプローブ光を生成し,航跡場励起用のレーザーパルスに対し垂直な方向からプラズマに入射させた.ブレード挿入時,非挿入時におけるプラズマの影絵や密度を干渉計で計測し比較した.ブレード挿入,非挿入時で平均密度に大きな変化は生じないが,ブレード挿入時でプラズマの長尺化が観測され加速長の長尺化につながる可能性がある. 前年度に既存磁石を用いて電子エネルギーメーターを構築し,磁場分布から算出される電子の軌道より,目標としている電子ビームのエネルギー範囲が計測可能であることを確認した.今年度はこの電子ビームエネルギーモニターを真空中に設置するため小型真空容器を設計した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は必要となる計測器の開発と実際の計測の二段階で計画されており,令和2年度は前年度に構築した計測器を用いて計測実験を行う予定であった.しかしながら,立入制限等によって計測に遅れが生じており,これまでに密度変調を与えたターゲットを用いた実験を行いプラズマ密度の計測は完了しているが,電子ビームの観測に至っていない. 今年度の実施結果よりブレード挿入,非挿入時で平均密度に大きな変化は生じないが,ブレード挿入時でプラズマの長尺化が観測されている.加速長の長尺化につながる可能性があるため引き続き検証を重ね詳細を明らかにする必要がある.観測された密度において密度変調率 1 を仮定すると航跡場の最大電場は約 300 GV/m となる.ガスジェット幅 1 mm を加速長として利用できたと仮定すると約 300 MeV 程度まで電子が加速されるが,変調率 1 は線形場ではないため実際には数 MeV 程度までの加速が限界であると予測される. エネルギーモニター用の真空容器の設計のみではなく製作まで完了する予定であったが遅延が生じている.空間プロファイル計測器に関しては電荷量を評価できるよう感度較正を行う予定であったが実施できていない.また,色収差を利用した実験を行うための予備実験が完了していない.実験装置の構築,解析用プログラムの作成は概ね完了しているため令和3年度の実施計画を再考し遅れを取り戻す予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は前年度で遅れが生じている計測及び計測器の作成に関して計画を再考し実施する.当所計画では令和3年度を計測実験及び解析にあてる予定であったが,上半期にエネルギーモニター用の真空容器の製作やビームモニター装置の較正を行う.また,Sub-10 fs プローブ光を導入し航跡場のスナップショット撮影を実施し,電子の入射が生じているかを直接観測する. 下半期には構築した計測機器を用いて低出力レーザーにおいて電子入射が生じる条件を明らかにする実験を重点的に実施する.必要最エネルギーを求め余剰分を波長変換することで色収差を利用した場合のプラズマ形成過程を明らかにすることを目指す.
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