2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on photo-positron spectroscopy
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19K20608
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
満汐 孝治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (10710840)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 陽電子ビーム / 表面状態 / レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、表面に局在した陽電子を光照射で外部に引き出す、光陽電子放出の実験技術を開発し、さらにこの技術を新たな表面分光法や量子ビーム発生技術に応用することを目的とする。具体的には、光陽電子の精密な運動エネルギー測定を利用した、固体最表面の電子状態を探る表面分光法や、励起光の波長・時間構造制御による超低エネルギー・超短パルス陽電子ビーム発生技術を実現する。 2019年度には、実験で必須となる短パルス状陽電子ビーム源、励起用レーザー光源、磁気ボトル型分光器の装置開発を中心に研究を行った。観測に十分な光陽電子の収量を得るためには、ピークパワーの高いナノ秒レーザーとこれに同期した短パルス状の陽電子ビームが必要となる。そこで、産総研の低速陽電子ビームラインから供給される陽電子ビームをバッファーガス式電磁トラップで捕捉して、パルス的に引き出すシステムを構築し、陽電子ビームの短パルス化制御(パルス幅10 ns以下、 繰り返し周波数1 Hz-100 Hz)を実現した。また、ナノ秒パルス色素レーザーを整備して、本研究に必要な近紫外域のレーザー光の発振を確認することができ、ナノ秒スケールでの同期が可能な陽電子・レーザー光源の開発がほぼ完了した。さらに、粒子軌道シミュレーションに基づいて、試料配置やその周辺のビーム輸送系、運動エネルギー測定用の磁気ボトル型分光器を検討し、それらの詳細設計も完了した。次年度からは、分光器を実装して光陽電子放出の原理検証実験を行い、基礎的なデータを取得する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、光陽電子の生成・分光のための実験システムの開発に取り組み、波長可変のパルス色素レーザーとこれに同期可能な短パルス状陽電子ビームを整備した。また、分光装置用の真空チェンバーと磁気ボトル型分光器の設計も完了した。陽電子短パルス化システムの開発に関する成果は論文で発表しており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に設計した分光装置を製作・実装して、光陽電子放出の観測実験を実施する。まず、金属表面に陽電子を照射して、再放出される陽電子を分光装置で観測し、分光器のエネルギー分解能を評価する。その上で、陽電子とレーザーの同時照射実験を行い、光陽電子の観測を試みる。励起光の波長を走査して、光陽電子の運動エネルギーの変化を測定し、陽電子表面状態の性質を系統的に調べる。
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Research Products
(7 results)