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2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K20615
• Research Institution: Mie University
• Principal Investigator: 小川 将樹 三重大学, 工学研究科, 助教 (30772644)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 反射的眼球運動 / 視覚的注意 / 視線誘導

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、反射的な眼球運動をデザインに応用できる可能性について調査するものである。研究の全体計画は、低次な知覚的特性の確認から応用を意識した評価実験に至るまでという、非常に広いものであった。本年度はその第一段階として、信頼性のあるデータを得るための実験環境の制作、基本的な知覚的特性の確認を目的として研究活動を行った。
まずは不足している器材の調達を行った。ただし、全てを購入するには予算が不足していたため、一時的な貸与を受けるなどして今年度の実験器材を応急的に揃えた。ただし、本来予定していた器材ではなかったため、事前に準備していたプログラムが使えず、大幅な変更を行った。
知覚的特性の確認においては、急遽変更したシステムにおける信頼性などの試験もかねて、申請者を含む数名を対象として予備実験を行った。視覚的注意の移動を誘起する3種類の刺激（矢印、視線、指さし）について、視線の誘導確率を求めた。その結果、視線の移動先に注意を補足するターゲットがある場合は刺激による大きな違いは得られなかったが、ターゲットが無い場合は、矢印を用いた際に視線誘導確率が若干高い可能性が得られた。ただし、視線の誘導確率そのものは、周辺視野に輝度変化を提示した場合の方が高く、中心視野に方向を指し示す手がかりを与えるよりも、周辺視野に手がかりを与えた方が視線を誘導しやすい可能性が示された。以上の予備実験は簡易暗室内で行ったが、明所での観察の結果は、必ずしもそれと一致しなかった。具体的には、周辺視野に輝度変化を提示した場合の視線誘導確率が若干低下し、中心視野に方向を指し示す手がかりを与えた場合の視線誘導確率が上昇した。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

準備の段階において、器材調達のための遅延が生じたが、ディスプレイ装置を妥協し、視線計測装置を一時的に借りることで急場を凌いだ。これにより、実験の開始が数か月遅れてしまった。本来は予備実験も一つずつを終わらせ、その結果に基づいて次の実験計画を調整していく予定であったが、遅れを補うべく、変更した実験環境における予備実験は並列的に進めた。ただし、実験場所が他の実験と共用であったことなども影響し、昨年度中に本実験には至らず、遅れを取り戻したとは言えない。
また、成果発表の面でも想定外の遅れがあった。具体的には、新型コロナウィルスの影響により、発表を予定していた国際学会がキャンセルになってしまった。これにより、昨年度の成果発表として予定していた機会が無くなってしまった。そのため、別の学会発表の場を探すなどの対策が必要となっている。

Strategy for Future Research Activity

可能であれば、新しい環境での予備実験を終えた知覚特性に関する実験の本実験を行い、科学的に妥当な証拠を得たい。また、現在予備実験を終えたもの以外にも、調査しておくべき知覚的特性は数多くある。そのため、まずはそれ等のデータを集め、基本的な特性をしっかりと理解することが最も重要である。
しかしながら、現在は新型コロナウィルスの影響が非常に強く、今年度中は被験者を集めての実験が実施できない可能性が考えられる。そこで、今年度はまず、本研究で対象としている視覚刺激を用いたインターフェース等の評価に関連する実験について、オンラインでの予備観察を行うことを計画している。視線計測装置等の器材の問題があるため、本実験をオンラインで行うことはできない。しかし、インターフェース等の評価や、認知特性の一部についての検討は、オンラインで予備観察を行うことが可能である。
成果の発表については、既に予定していた国際学会などが中止されており、影響が生じている。しかし、一部の情報通信系の研究会や学会などでは、オンラインでの実施が決定されている。そこで、まず本年度中にはオンラインで開催される研究会や学会への投稿を行う。その後、更に考察を深めて、次年度以降に国際学会等における発表や、論文誌への投稿を行いたい。
しかし、本研究は被験者を募っての視線計測実験があってこそ、科学的意義を主張できるため、本年度の終了時の状況次第では、研究機関の延長申請も検討する必要があると考えている。

Causes of Carryover

昨年度の器材準備の状況として、視線計測装置の貸与と、ディスプレイ装置の妥協によってシステムを構築した。本研究の目的上、基本的には、視線計測装置を購入し、ディスプレイを妥協するべきであろう。しかし、知覚特性について、科学的に意義のある研究を行うためには、ディスプレイの性能も非常に重要である。そこで、昨年度は前述の形で様子を見て、今年度中に決断することを決め、昨年度の予算を残すこととした。現時点では、今年度中に視線計測装置を購入し、次の実験に備える予定である。