2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト特有のリズムを合わせる能力の発達プロセスの解明
Project/Area Number |
19K20646
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
ユ リラ 京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (60760709)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 発達 / 乳幼児 / 認知科学 / 社会的認知 / リズム / 時間的随伴性 / 自己認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
他者とリズムを合わせる能力は、集団における協調的行動の基礎である。ヒトとチンパンジーを対象とした比較認知科学研究から、ヒトは進化の過程で正確かつ迅速な「リズムを合わせる能力」を獲得したことが分かった(Yu et al., 2018)。では、我々はこのヒト特有のリズムを合わせる行動特性を、発達の中でいつ・どのように獲得するのだろうか。本研究では、2.5歳以前の乳幼児期の発達過程に焦点を合わせて、他者とリズムを合わせる行動の出現時期を明らかにする。また、リズム合わせ行動の出現に、知覚―運動協応および社会的認知の発達がどのように関わっているかを実証的に明らかにする。 当該年度は、4月頭からの新型コロナ感染症拡大の影響で、実験室訪問型の実験が休止となる時期があった。この時期には、これまで収集してきたデータの分析と研究論文の執筆に注力した。成果の一部は、オンラインで開催された国際学会 International Congress of Infant Studiesおよび日本赤ちゃん学会でポスター発表を行い、国際学術誌 Infancyへ掲載される(日本時間2021年4月30日にオンライン公開予定)。実験室訪問型実験が再開された8月中旬から11月末までは、生後14-16ヶ月児を対象に「同期行動が乳幼児の援助行動に与える影響」に関する課題を遂行した。また、生後3-4ヶ月児を対象に「水中における下肢の自発的動き」を計測する予備実験も調査協力者の家に訪問して行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生後18ヶ月から42ヶ月児を対象に太鼓を用いて行った実験研究の成果がまとまりつつある。相手にリズムを合わせる能力の発達過程を詳細に観察・記録することで、ヒト特有の運動能力と社会的認知能力の発達がどのようにリズム同期能力の発達に関連するのか、について理解を深めることができた。また、成果の一部を国際学会International Congress of Infant Studiesで発表することで、日本以外にいる研究者とも活発に議論ができた。本年度、新型コロナ感染症拡大防止のため、当初予定していた研究課題をすべて遂行することはできなかったが、国内研究者との共同研究を進めることができた。その一部の研究成果は、国際学会 Society for Research in Child Development 2021で発表し、現在、国際学術誌投稿に向けた準備を進めている。また、生後3-4か月児を対象に実施した予備実験を通じて、今後の研究遂行に必要な実験手法の検討を行えた。以上により、現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年4月に、研究代表者の研究機関に異動があった。新たな研究室における研究リソースも最大限活用し、乳幼児における「自発的なリズム反応」と、「自己の身体運動に随伴して生じる知覚への敏感性」の関連を検討する新たな研究課題に着手する。ただし、現在も新型コロナ感染症拡大の影響で、実験室訪問型の実験が休止している。この状況が続く場合は、すでに得ているデータの解析と研究論文の執筆に注力し、研究成果をあげていく。
|
Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナ感染症拡大のため、すべての学会がキャンセル又はオンライン開催となった。そのため、交付申請時に予定していた国際学会参加(International Congress of Infant Studies@スコットランド)のための渡航がなくなり、渡航費の支出は予想より大きく減った。また、本年度の実験室訪問型の研究課題遂行に用いた実験装置は、これまで使用してきた実験機材で十分遂行できた。一方、新たな実験物品としては、予備調査で用いた乳児用プールなどの購入が必要であったが、大きな支出は必要なかった。調査参加者における謝礼は、昨年度に引き続き、共同研究者の京都大学大学院教育学研究科・明和政子教授の科研費により支出した。以上の理由から、交付金の次年度使用が生じた。 次年度においては、新たな実験装置の開発が必要であり、主に物品費での支出が予想される。また、視線計測機およびその解析ソフトのレンタルが必要になる可能性もある。現在、国際学術誌投稿に向けて準備している原稿については、オーブンアクセスとする予定である。
|
Research Products
(4 results)