2020 Fiscal Year Research-status Report
心的イメージを操作する能力の進化過程―物理的因果理解の比較認知科学的検討―
Project/Area Number |
19K20652
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
永野 茜 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (50823019)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心的表象操作 / 物理的因果理解 / 道具使用 / 比較認知科学 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度も引き続き,心的表象操作能力の発生過程,特に進化過程と発達過程を解明することを目的として研究を行った。心的表象操作能力とは,目の前にある物体を実際に操作しなくても,その物体が環境に及ぼす結果を推測する能力のことである。まず,齧歯類における心的表象操作を明らかにするために,ラット(Rattus norvegicus)を対象に道具使用行動について検討した結果を1本の論文としてまとめ,国際誌「Current Psychology」に投稿した結果,受理されオンライン上で論文が公開された。加えて,ラットの道具使用行動に関する別の論文を1本,執筆し海外誌に投稿した。この論文については,現在,査読中である。更に,比較認知科学についての書籍のうち1章を執筆するように依頼があり,ラットを含む動物の道具使用行動について執筆した。 本年度は,心的表象操作の発達過程の基礎となる気質や基本的な記憶能力についての検討を行った。齧歯類デグー(Octodon degus)を対象に,幼齢期(3週齢)の気質が若齢期(5週齢と12週齢)・成熟期(1歳1週齢)における空間的ワーキングメモリや成熟期(1歳)での気質を予測するか否かについて検討した。この結果の一部について,「日本動物心理学会第80回大会」にてポスター発表を行った。 今後は,デグーのみならず,他の動物種(フサオマキザル,リスザル,オカメインコ)も対象として道具使用課題を実施することで,心的表象操作の進化メカニズムの解明を目指す。その準備段階として,フサオマキザルを対象に道具使用行動を検証するための実験計画を考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎となる,ラットを対象とした物理的因果理解に関する論文が1本,海外誌(Current Psychology)に掲載されたため。また,比較認知科学全般に関する書籍のうち1章を担当し,執筆したため(2021年度の秋に,海外の出版社から出版予定)。なお,「Tool Use」というタイトルの当該の章には,自分が実施した実験から得られた心的表象操作に関する知見も含まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度,検証したデグーの行動傾向や基礎的な認知能力がどのように,より高度な心的表象操作と関連しているのかということを明らかにするため,デグーを対象に道具使用課題を実施する。更に,他の動物種(フサオマキザル,リスザル,オカメインコ)を対象とした検証も行うことで,心的表象操作の進化メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
参加予定だった国内外の学会が中止もしくはオンライン開催となり,旅費や参加費が不要となったため,当初の予定よりも使用額が低くなった。次年度は,当該年度の学会発表件数が少なかった分,当初の予定よりも多くの国内学会および国際学会に参加し,次年度使用額と当該年度以降分として請求した額を合わせて執行する予定である。
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