全半球皮質脳波計測による視覚入力から眼球運動にいたる大脳情報ダイナミクスの解明

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K20653
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 兼子 峰明 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (50744372)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 視覚 / 眼球運動 / 皮質脳波計測 / マーモセット / 情報ダイナミクス / ECoG / Natural vision / データ駆動

Outline of Annual Research Achievements

自然で複雑な視覚環境を探索する際に、複数の広域な領域にまたがって大脳半球全体がどのようなダイナミクスによって環境中の情報を脳内に構成するかという全体像は未だ明らかでない。そこで、マーモセットを対象として、自然動画の自由観察課題を実施して、その際の眼球運動パターン及び96チャンネル広域皮質脳波記録を行った。この電極はマーモセット大脳皮質外側の半球全体を覆うことができる。前年度に取得したデータの解析を進めた。自然な視覚行動においては、求心性と遠心性の両者を反映した信号が背側視覚野において先にたちあがり、それに続いて腹側視覚系が駆動するという活動パターンが観察された。また、皮質の情報ダイナミクスは、のっぺりと一様なものではなく、局在した情報パケットが背側から腹側系にめぐっていくというダイナミクスとなっていることを確認した。さらに、自然な視覚行動では平均すると200－250ms間隔でサッカードが生起するが、それはちょうど先の情報パケットが側頭葉前端まで到達して、皮質全体の活動がサイレントになるタイミングと一致しているようだった。ただし常にそうなるわけではなく、サッカード自体は、情報パケットが皮質のどの段階にあっても発生するパラレルなシステムであることが示唆された。これらの結果は、視線行動と皮質情報ダイナミクスの調和により、いかに効率的な視覚認知が実現されているかを示している。

Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

必要なデータ取得と解析がほぼ完了しており、自然な視覚行動における情報ダイナミクスをとらえることに成功している。

Strategy for Future Research Activity

これまでの解析結果をより精緻にして論文執筆を行う。

Causes of Carryover

共同研究者との打ち合わせに伴う出張の中止のため