2019 Fiscal Year Research-status Report
多階層スケールの流動解析による赤血球と内皮グリコカリックスの力学的相互作用の解明
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19K20659
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮内 優 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (00758691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 赤血球 / グリコカリックス / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内腔を覆う血管内皮細胞の膜表面にはグリコカリックスと呼ばれる,糖鎖に連なったブッシュ状の高分子膜タンパク群が存在しており、グリコカリックスの損傷が様々な循環器系疾患を引き起こすことが知られている。本研究は赤血球とグリコカリックスの力学的相互作用の解明を目的としている。本年度は赤血球とグリコカリックスの力学的相互作用解明の基礎的検討として、滑らかな基板上を移動する赤血球の摩擦特性について調べた。 研究方法は連続体スケールにおける流体と弾性膜の連成解析であり、ガラス基板や血管内皮細胞培養基板など、様々な基板上を移動する赤血球の摩擦特性を計測した傾斜遠心顕微鏡による実験結果と比較することで、本解析手法の妥当性を確認するとともに滑らかな基板上を移動する赤血球の摩擦特性を調べた。赤血球膜にはSkalakモデル、流体と赤血球膜の連成は埋め込み境界法を採用した。傾斜遠心力場を再現するために、膜内外を識別する指示関数を用いて赤血球膜内部に、血漿と赤血球膜内部流体の密度差に起因する傾斜遠心力を与えた。 赤血球は傾斜遠心力によって基板の方向へ移動し、流体潤滑の作用により基板から少し浮いた状態で、赤血球膜に作用する傾斜遠心力と流体力が釣り合う平衡状態となった。この結果は先行研究で実施された剛体赤血球モデルおよび弾性カプセルを用いたシミュレーション結果と整合している。また、本解析で得られた摩擦特性は傾斜遠心顕微鏡による実験結果と良好に一致していた。平衡状態における赤血球の形状は無負荷時の両凹盤形状から大きく異なる、赤血球の移動方向に大きく膨らみ後方がしぼんだ非対称形状となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の順序とは異なっているが、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は微視的スケールの分子動力学による解析に着手する。
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Causes of Carryover |
解析・画像処理用計算機が未購入であるため、次年度使用額が生じた。大規模計算に着手した際に購入する予定である。
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