2019 Fiscal Year Research-status Report
トイレ環境下での事故予防に向けた便座脈波伝播速度計測技術の開発
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19K20660
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 祐佳 筑波大学, システム情報系, 助教 (20650542)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心弾図 / 脈波伝播速度 / 無拘束計測 / ballistocardiogram / PWV / unobtrusive monitoring |
Outline of Annual Research Achievements |
トイレ環境は短時間滞在にもかかわらず日常下での事故(疾病,外傷等)の発生率が高い.温暖差によるヒートショックや血管迷走神経反射,怒責(いきみ)による血圧変動が循環系への負荷となるためである.さらにこれらの急激な血圧上昇は失神などの意識消失による外傷が発生する危険も伴う(トイレ環境下イベント). そこで本研究課題の学術的問いを「どのようにすればトイレ環境下での瞬時的な血圧変動の検出が実現できるか」とする.便座着座のみで脈波伝播速度計測可能なシステムの開発および脈波伝播速度による連続血圧変動推定法の確立を目的とする本研究課題の実現は,日常生活での定期的な無意識血圧測定につながり,異常値の早期発見やスクリーニング適用など,波及効果は大きい.本研究では,便座より収録した生体情報を用いて心拍一拍毎に脈波伝播速度を連続的に算出する. トイレでの無意識計測に向け,従来の皮膚との直接接触を要する光学式センサではなく, 便座内に設置可能な圧電センサによる脈波伝播速度計測を検討した(便座脈波伝播速度計測システム).圧電センサで検出された振動より心弾図と脈動を分離する手法は研究代表者らによって開発されたものであり,これらの信号から脈波伝播速度を検出する手法はこれまで検討されていない.便座内のセンサのみで脈波伝播速度を計測する点が本研究の創造性となる. 本年度はトイレ環境下に適した脈波伝播速度計測手法の開発のうち,便座内に設置可能な圧電センサによる生体信号収集方法について検討した.若年成人に対し便座着座時の生体計測実験を行い,心電図から得られた心拍数と提案手法で測定した心拍数との誤差を検証した結果,誤差3%以内での心拍数計測が達成されたことから,脈波伝播速度計測への適用が可能と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トイレでの無意識計測に向け,従来の皮膚との直接接触を要する光学式センサではなく, 便座内に設置可能な圧電センサによる脈波伝播速度計測を行った(便座脈波伝播速度計測システム).圧電センサで検出された振動より心弾図と脈動を分離する手法は研究代表者らによって開発されたものであり,すでに検討されていたことから,脈波伝播速度計測への適用可能な信号が得られたことが以下の実験より確認された. 本年度はトイレ環境下に適した脈波伝播速度計測手法の開発のうち,便座内に設置可能な圧電センサによる生体信号収集方法について検討した.若年成人に対し便座着座時の生体計測実験を行い,心電図から得られた心拍数と提案手法で測定した心拍数との誤差を検証した結果,誤差3%以内での心拍数計測が達成されたことから,脈波伝播速度計測への適用が可能と考えられる. 研究代表者らはカフ式血圧計と脈波伝播速度の比較により,運動前後の血圧変動の間欠的変化の検出に成功しており,その中で脈波伝播速度が血圧変動以外の変動成分を持つことを明らかにした.心拍変動解析による自律神経機能評価から脈波伝播速度の血圧変動成分を抽出し,容積補償法による非観血連続血圧計(CNAP500,cnsystem)との比較により血圧変動への追随性を評価する点が本研究の独自性となる.本年度は非観血連続血圧計(CNAP500,cnsystem)を試験的に導入し,事前実験を行った.血圧変動を喚起する実験プロトコルを複数実施し,脈波伝播速度速度の精度検証に適した,被験者実験の設計を行った.以上により,現在までの研究の進捗状況は,おおむね順調に進呈しているとの判断に至った.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は以下の通りである. 脈波伝播速度による血圧変動検出方法の確立 ①血圧変動の検出精度検証:若年成人に対し便座着座時時の脈波伝播速度計測および連続血圧測定(非観血連続血圧計),血圧計測(血圧脈波検査装置)を行い,従来の自動血圧計の規格(JIS T 1115)における計測精度を充たす,脈波伝播計測システムおよび血圧推定アルゴリズムを構築する.その過程で心弾図より算出する心拍変動より自律神経機能評価を行い,脈波伝播速度の血圧変動成分の抽出を行う.さらにヴァルサルバ法(息ごらえ)により瞬時的な血圧上昇を模擬し,血圧変動検知精度を検証する. ②血圧推定の精度検証:季節性変動 若年成人に対し便座着座時の脈波伝播速度計測および連続血圧計測の継続的な計測実験を行い,血圧の季節変動(夏:下降,冬:上昇)に対する血圧推定アルゴリズムの精度評価を行う.
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Causes of Carryover |
本年度導入した血圧脈波検査装置 HBP-8000が申請時の予定額よりも安価であったため未使用額の計上があった.次年度の実験に使用する消耗物品(電極他)の購入を予定している.
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Research Products
(1 results)