2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K20665
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松崎 賢寿 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 非常勤講師 (50830527)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞膜 / 硬さ / Laurdan / 分化 / 顕微鏡法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞膜硬さのタイムラプス解析から「細胞膜の軟化がミニ肝臓の疾病を誘起させ得るか」、つまり生命現象を制御する上位概念に細胞膜の硬さがあるかを解明することである。細胞膜の硬さを評価するためには、細胞膜の物性変化によって蛍光波長が変化するLaurdan色素を用いて、共焦点顕微鏡のスペクトル解析から達成する。令和1年度の計画としては、本顕微鏡の構築を進めて細胞膜の硬さのタイムラプス解析を進める予定であった。しかしながら、研究代表者の移動に伴って測定系の再構築が必要であったこと、更に細胞膜物性を評価する上で顕微鏡の分解能の低さが問題点として出てきた。そこで申請者は方針を変更し、超解像システムをシステムに組み込み、細胞膜を高感度にタイムラプス観察が可能な新規顕微鏡法の開発に成功した(Matsuzaki et al., in preparation.)。そこで複雑なプロセスである疾病化をやる前に、先ずは制御が容易な正常な細胞分化に着目し、細胞膜の硬さとの相関を明らかにすることに集中した。すると、膜の構造変化が分化を惹起するという初期的なデータを得た。こうした知見は分子生物学的なアプローチ(遺伝子導入や免疫染色)では得られない、全く新規の物理パラメーターで分化を評価できるという優位な点を有している。以上の結果は、本研究の目的である生命現象の上位概念に細胞膜の硬さがあるかを解明する良いシステムとなった。 令和2年度は超分解能で細胞膜の構造と物性が同時に測定できる本顕微鏡技術の更なる開発を進める。また本顕微鏡法を用いて、細胞膜の構造と分化との相関解析を更に進める。そうして、膜の微小構造の変化が引き金となって惹起される新規分化機序の解明を目指すことで、本研究目的を達成する。 なお本年度の成果は、招待講演2本(内一件は予定を含む)、日本語雑誌1件、日本語口頭発表1件で発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和1年度の計画としては、細胞膜の硬さのタイムラプス解析が可能な顕微鏡法の構築を皮切りに、多細胞系の観察へと進める予定であった。しかし、研究代表者の移動に伴って、現所属の顕微鏡をベースに測定系を再構築する必要があった。また、細胞膜の構造を観察する上で、分解能がボトルネックになることも明らかとなってきている。そこで申請者は超解像顕微法と組み合わせることで分解能のボトルネックを克服し、細胞膜構造を高感度で可視化する顕微鏡法の開発に成功している(Matsuzaki et al., in preparation.)。本顕微鏡の改良が更に進めば、最終目的である細胞膜の硬さが生命現象を司る上位概念であることが解明される可能性が高い。以上によって、顕微鏡開発を進めているために、自己評価の区分は「やや遅れている」が、令和2年度は本顕微鏡の完成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は細胞膜の硬さのタイムラプスを達成できる、超分解能の顕微鏡の更なる改良を進める。現状では細胞膜の微小構造の変化が分化を惹起するという興味深い知見も得ている。そうした膜の構造・物性変化のスピードと分化のスピードとを定量的に比較することで、細胞膜の硬さが生命現象(分化、疾病化)の上位概念にあることを示し、その制御を目指す。
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Causes of Carryover |
元所属先にて、既存設備(光学素子、顕微鏡筐体、レンズ)を基に本研究を進める顕微鏡開発が進められた。次年度は「次年度使用額」を培養と更なる顕微鏡開発にあて、本研究目的の達成を目指す。
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Research Products
(5 results)