2022 Fiscal Year Annual Research Report
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの心電図異常が示す病態的意義の解明
Project/Area Number |
19K20673
|
Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 哲志 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (50650892)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | デュシェンヌ型筋ジストロフィー / 18誘導心電図 / 心機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は、進行性で致死性の筋力低下を特徴とする遺伝性筋疾患である。DMDでは多くの筋外合併症を認めるが、心電図異常は頻度の高い合併症である。R波は心室の脱分極を表し、R波高は心室の状態を評価する指標である。DMD患者でR波高の異常が報告されているが、その臨床的意義は不明である。18誘導心電図は従来の12誘導心電図と比較し、右室や左室後壁の詳細な観察が可能であるが、18誘導心電図を用いたDMD患者の研究はない。そこで導出18誘導心電図を用い、DMD患者のV1~V9波の経年変化と、心臓超音波検査で測定した心機能の関連を調べた。 結果 2007年7月から2021年3月の間に神戸大学医学部附属病院を受診し、心電図検査と心臓超音波検査を同日に行ったDMD患者193例(2-34歳)から969回の心電図検査結果を得た。R波高と年齢の間に、負の相関(r=-0.13- -0.52)を認めた。R波高と左室駆出率(LVEF)の関連を検討したところ、V4、V5、V6、V7、V8、V9のR波高でLVEFと正の相関を認めたが、そのなかでV6は最も強い相関を示した(r=0.52)。心機能障害(LVEF<53%)と心機能保持(LVEF≧53%)のR波高を9-29歳の年齢で比較したところ、V6からV9では、心機能障害のR波高の平均値は、心機能保持にくらべて常に低い値を示した。V6~V9では、心機能障害を認める3年前まではR波高が保たれていたが、心機能障害となる2年前に急激な低下を認めた。 結論 DMD患者において、R波高は年齢とともに低下した。V6~V9誘導では心機能障害を認める2年前に急激に低下することから、左室側壁から後壁の心筋の電気学的な障害が、心機能障害に先行して認めることが明らかになった。
以上の内容を英文雑誌に投稿中である。
|