2019 Fiscal Year Research-status Report
脆弱X症候群モデル神経細胞における活動パターンの多様性とその応用
Project/Area Number |
19K20683
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
矢田 祐一郎 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別研究員 (80805797)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脆弱X症候群 / 神経細胞 / 神経同期活動 / パターン解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
脆弱X症候群(FXS)は遺伝性疾患で、学習障害やワーキングメモリ機能の低下などの認知障害を生じる。しかし、そのメカニズムは未だ詳しくは分かっていない。本研究では、脆弱X症候群の神経細胞集団では活動パターンに異常が生じているという仮説を立て、脆弱X症候群患者iPS細胞由来の神経細胞の活動を計測・解析することで検証する。また、活動パターンを改善しうる薬剤の探索をすることを目指している。 今年度は本研究課題の初年度として、脆弱X症候群患者由来iPS細胞株の樹立と神経細胞の誘導、そしてその細胞が脆弱X症候群細胞としての遺伝子型・表現型を示すことを確認した。脆弱X症候群患者から作製したiPS細胞から神経細胞を分化誘導した。脆弱X症候群では、X染色体の責任遺伝子FMR1領域に存在するCGGリピートの長さが200リピート以上に延長していることが知られている。(通常は40リピート未満)。使用した患者細胞がこの条件を満たすかどうか、PCRに基づく手法でリピート長を確認した。また、脆弱X症候群では、FMR1プロモータのメチル化が生じ、その転写・翻訳が行われなくなる。樹立したiPS細胞およびそこから誘導した神経細胞に対して、qPCRおよびウェスタンブロッティングを実施し、転写物のFMR1 mRNAおよび翻訳物FMRPの産生減少を確認した。上記から、準備した細胞が脆弱X症候群の疾患モデル細胞として使用するために必要な遺伝子型・表現型を持つことが確認できたため、電気生理的な特徴の確認に移る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者iPS細胞から神経細胞を分化誘導し、基本特性を確認して脆弱X症候群株としての遺伝子型・表現型を示すことを確認したため。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた神経細胞をマルチウェル多点電極アレイを用いて神経活動を評価する。多点電極アレイはアレイ状の平面電極群上に細胞培養ができ、神経細胞の発火など電気活動を複数の細胞から捉えられる。先行研究で報告された脆弱X症候群神経細胞での発火率上昇が本研究の系でも再現される事を確認する。そして、iPS細胞由来の神経細胞を用いて連続した同期発火期間を評価する実験系を作製する。取得した電気生理データに対してパターン解析を実施し、仮説を検証する。
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Causes of Carryover |
電気生理実験の実施計画が年度を跨ぐ計画としていたため。
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