2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of multi-functional chelating nanomedicines as theranostics
Project/Area Number |
19K20692
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金 雅覽 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (00794679)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属イオン / ドラッグデリバリーシステム / バイオイメージング / 造影剤 / キレート剤 / キレーション療法 / 高分子ナノ粒子 / 金属中毒症 |
Outline of Annual Research Achievements |
体内金属イオン濃度の調整はもっとも重要な生体機能の一つであるが、その人為的な制御は極めて難しい。低分子キレート剤の金属錯体はMRIの造影剤として用いられているが、金属イオンが長期間代謝されず残留するなど、重大なリスクを抱える。一方で、金属中毒症を伴う様々な難病に対して、低分子キレート剤の投与により体内での錯体の生成を誘導し、排出を促進させるためのキレーション療法が行われているものの、その効率は極めて低い。本研究では、これらの問題点を克服し、目的の金属イオンを送達する、または、異常蓄積された金属イオンを捕獲・排出する安全かつ有効なナノメディシンの開発を目指している。 このようなナノメディシンを作製するため、ポリエチレングリコール(PEG)とイミノニ酢酸が導入された高分子セグメントを結合させ、ブロック共重合体(PEG-b-polychelator)を合成した。このPEG-b-polychelatorは金属イオンとの混合により、直径50nm程度のナノ粒子を形成した。これらのナノ粒子は金属イオンを安定に封入しているため、金属イオン送達型ナノ粒子として用いられる。鉄(II)、マンガン(II)、銅(II)を封入させてナノ粒子を初代培養細胞に対して曝露させた結果、金属イオンの酸化能からなる細胞毒性が効率的に抑えられ、金属イオン単独と比べてそのIC50値が5―20倍も増加することが確認された。 更に、金属イオン捕獲型ナノ粒子に関しては、PEG-b-polychelatorの側鎖に架橋剤を導入することで、ジスルフィドやシロキサン結合により分子間を架橋させ、直径40nm程度のキレート能を有するナノ粒子が得られた。このナノ粒子は、血中を安定に滞留しながら過剰な金属イオンを捕獲することが期待されるため、上述したキレーション療法での評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の研究計画として、高分子材料の合成及びナノ粒子の作製、安定性の評価を目標としていた。この計画の通り、水溶性ポリエチレングリコール(PEG)とポリクロロメチルスチレンとのブロック共重合体(PEG-b-PCMS)のPCMSセグメントの側鎖に、キレート分子となるイミノ二酢酸を導入し、キレート能を有するPEG-b-polychelatorを合成した。核磁気共鳴法(NMR)及びゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)での分析に於いて、狙い通りの化学構造や分子量の高分子材料が得られたことを確認した。この高分子材料を用いてナノ粒子を作製し、安定性の評価を行った結果、ナノ粒子からの金属イオンの漏出が高度に抑制され、通常の金属錯体と比べて極めて高い封入安定性を示した。以上の結果を踏まえ、高分子材料の合成・物性評価の段階まで進めることができたため、次の段階である動物実験モデルでの評価を進めている。よって、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は高分子材料の合成や分析、最適化によりナノ粒子を安定化させること、また細胞実験でのナノ粒子の機能評価を重点に進めたきた。今後は、動物実験での安全性の評価と共に、また、ナノ粒子による体内の金属イオンの制御能の検証を行う。ナノ粒子及び金属イオンの血中滞留性のみならず、各臓器への残留、臓器障害の評価をも行う。 酸化促進剤としての鉄(II)送達型ナノ粒子に関しては、ゼノフトモデルおよび化学発生癌モデルに対してもその制がん効果の評価を進めていく。また、金属イオン捕獲型ナノ粒子に関しては、鉄を高濃度に含有する飼料の投与により、鉄中毒症のマウスモデルを作成し、ナノ粒子による解毒作用の検証を進める。
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