2022 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病治療に向けた歯肉組織のカドヘリン結合を調節するポリロタキサン足場の構築
Project/Area Number |
19K20694
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
有坂 慶紀 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (70590115)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリロタキサン / 超分子 / 歯周組織 / 物理バリア機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科領域において歯肉炎および歯周炎は、歯周病に繋がる炎症疾患の一つである。本研究課題では、細胞-細胞間結合の強化を可能とするポリロタキサン足場の構築を目的とする。さらにポリロタキサンの構造特性(分子可動性)が歯肉上皮細胞の細胞間結合に関連するタンパク質の発現や物理バリア機能回復に与える効果を解析する。2022年度は、炎症性サイトカインの存在下において上皮細胞の遺伝子発現にポリロタキサンの分子可動性が与える影響について評価した。分子可動性の異なるポリロタキサン表面を用いてtumor necrosis factorα (TNF-α)存在下でヒト由来扁平上皮がん細胞(Ca9-22細胞)の培養を行ったところ、分子可動性の高いポリロタキサン表面上の細胞においてIL-1βおよびIL-6遺伝子の発現が有意に上昇していることが明らかになった。また細胞-細胞間接着に関連したミオシン軽鎖キナーゼ (MLCK)の遺伝子発現においては、有意に減少していることがわかった。TNF-αはnuclear factor-κBを活性化してIL-1βやIL-6等の炎症性サイトカインの産生を刺激するとともに細胞-細胞間接着に影響を与えることが知られている。本研究を通じて得られた結果は、ポリロタキサン表面の分子可動性が上皮細胞の炎症応答に対して影響を与える可能性を示している。この詳細なメカニズムについては未だ完全には明らかにできていないものの、ポリロタキサンの分子可動性をバイオマテリアル設計に応用することによって、炎症時における上皮細胞の細胞-細胞間結合の透過性を改善することが期待できる。
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