2019 Fiscal Year Research-status Report
靭帯組織成分から構成される組織工学的人工靭帯の開発
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19K20695
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
晝河 政希 三重大学, 工学研究科, 助教 (40823456)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工靭帯 / エラスチン / コラーゲン / 靭帯細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
前十字靭帯などの膝関節靭帯はスポーツ等で損傷を受けやすい組織であり、現在では患者自身の腱組織(自家腱)または、合成高分子を含む人工靭帯を用いた再建手術が行われている。自家腱を用いた方法では採取部の腱組織の強度が低下し、人工靭帯を用いた方法では移植する靭帯と移植部周辺の骨組織との結合が困難という問題がある。本研究では、これらの問題を解決するために、正常組織を犠牲にすることなく患者自身の靭帯組織を再生できる新規組織工学的人工靭帯の開発を目的とし、次の研究を行った。 ①人工靭帯モデル作製のため、コラーゲンおよびエラスチンを用いた材料作製を行った。コラーゲンに関しては湿式紡糸法により糸状材料へ成型しており、その際の条件(押出口径、流速、コラーゲン濃度、架橋剤濃度)による力学的特性への影響を調査し、モデル作製のための基礎データを得た。②作製した材料を足場として細胞の応答調査を行った。コラーゲン糸状材料については複数本を束ねた糸束へ細胞を播種し、細胞活性を調査した。一週間の培養において細胞活性の低下はなく、足場材料としての問題は見られなかった。エラスチン材料についてはエレクトロスピニング法によりファイバーシート材料を作製し、それを足場とした細胞のALP活性について調査した。ファイバーシート材料の線維配向の有無によらず細胞のALP活性は確認されたため、人工靭帯の骨挿入部材料としての有用性が示唆された。③人工靭帯モデルを検討のため、コラーゲン糸束の力学的特性について評価した。コラーゲン糸状材料の弾性率に関しては、今後の移植試験を想定している家兎膝靭帯(約18MPa)より高い値(約26MPa)であったが、破断強度に関しては、まだ不十分であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①材料作製および②材料上の細胞応答については概ね予定通りに調査を進めており、③人工靭帯モデル作製については現在のコラーゲン糸束を用いたモデルでは力学的強度が不足しているため、人工靭帯モデルの作製が少し遅れている。これは力学試験時にコラーゲン糸束の糸すべてを同時に引張できていないケースが多く、モデルの把持方法の改良を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
人工靭帯モデルについて、糸束モデルの改良および編むなど構造を少し変えたモデルも作製しており、今後は複数のモデルを作製し、比較検討を行っていく。同時にモデル上での細胞培養を行い、細胞応答および力学的特性の変化について調査していく。細胞応答については基質産生調査(遺伝子およびタンパク質の発現)を行い、靭帯実質部および骨挿入部をそれぞれ評価していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)人工靭帯モデルの作製が少し遅れており、モデルを用いた培養試験が少なくなったためだと考えられる。 (使用計画)人工靭帯モデルを用いた培養試験に使用する。
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