2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K20701
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
大高 晋之 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (30739561)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖代謝 / シアル酸 / チオール-エン反応 / ゲル / 糖鎖改変 / コラーゲン / ポリエチレングリコール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、糖鎖改変技術を用いて細胞表面に官能基を導入し,チオール含有高分子と化学結合することで細胞同士を結合し、人為的・立体的に細胞を構造化する新規バイオインクの開発を目標として企画された。2020年度はメタクリロイル基を導入した線維芽細胞株とチオール含有高分子(4分岐ポリエチレングリコール等)との光活性型チオール-エン反応によって細胞構造化を行った。 1. 細胞の糖鎖改変:既報にならいメタクリロイルマンノサミンの合成と線維芽細胞 L929の糖鎖改変を行った。 2. チオール化コラーゲンを用いた細胞構造化の試み:既報にならいコラーゲン側鎖にチオール基を導入したチオール化コラーゲンを合成し、これを任意の比率で糖鎖改変細胞懸濁液に添加し反応液を調整した。糖鎖改変細胞とチオール化コラーゲンで細胞の立体積層が行えることを確認したが、陰性対照としてコラーゲンのみを可視光照射したところ、チオール化されていないコラーゲンでもゲル形成が起こることがわかった。 3. チオール化ポリエチレングリコールを用いた細胞構造化:コラーゲン自体に光応答的なゲル化の特徴があることから、チオール化コラーゲンを用いた場合では膜糖鎖-ポリチオール反応によるゲル化への影響とそれ以外の影響を区別できない。そこで、末端がSH化された4分岐ポリエチレングリコール(4分岐PEG-SH)を用いて実験条件を再検討した。4-arm PEG-SHのみ、またチオール化していない4-arm PEGと糖鎖改変細胞に可視光を照射した場合は細胞構造体が形成されないのに対して、糖鎖改変細胞と4-arm PEG-SHの両存在下でのみ細胞構造体が形成されることを確認した。また、細胞の層状構造を形成できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では血管構造の構築を予定していたが、コラーゲン自体のゲル化特性の影響で、チオール含有高分子の選択を再検討する必要があり研究計画の変更を余儀なくされた。本研究の根幹は「糖鎖改変細胞とチオール含有高分子を用いた人為的な細胞構造化」であるため、分子単体ではゲル化する心配のない4分岐PEG-SHを選択し、細胞構造体形成についての基礎的なデータの収集(反応条件の検討、細胞生存率の評価、積層化の実施)に努めた。申請書に記載した研究計画と比べると応用展開にむけた取り組みに遅れはあるものの、光応答的な細胞間結合の実証は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、「糖鎖改変細胞とチオール含有高分子を用いた人為的な細胞構造化」についての論文執筆と学会発表に取り組む。また昨年度の実験結果を通して、細胞構造化の力学強度の限界が懸案となった。細胞膜の糖鎖分子は密度が規定されているため、反応点の量的な制御に限界があることが要因の一つと考えられる。そこで、細胞膜タンパクへの官能基修飾や脂質分子の細胞膜融合などの方法で細胞表面を機能化する方法について検討を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で実験活動を中止した期間があったこと、また参加予定だった学会の開催中止などが原因で、予定していた活動に遅れが生じた。そこで、当初2020年度に使用予定であった額を、2021年度の活動(新たな細胞膜機能化、論文作成、学会参加)にあてる。
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