2022 Fiscal Year Annual Research Report
心エコー法による左心不全患者の右室後負荷の包括的評価法の確立
Project/Area Number |
19K20703
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加賀 早苗 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (60630978)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 左心不全 / 右心機能 / 心エコー |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全は、心疾患による死亡の大半に関わる重篤かつ頻度の高い合併症であるが、最近、左心不全患者の予後が右室機能の良否に左右されることが注目されている。これは肺循環系が右室に与える後負荷に起因すると考えられる。従って、肺循環動態を精密に把握する意義は大きいと考えられる。本研究の目的は、左心不全患者の肺循環系が右室に与える後負荷を、非侵襲的な心エコー法で包括的に評価するための方法論を確立し、その右室機能や患者予後との関係を明らかにすることである。 血行動態評価のために右心カテーテル検査と心エコー検査が行われた洞調律例を対象に、肺循環動態指標のひとつである抵抗-コンプライアンス(RC)時間の非侵襲的算出法の妥当性を検討した。心臓カテーテル検査で得られた肺動脈圧波形から拡張期圧降下の時定数を求め、RC時間cathとした。心エコー法で、肺動脈弁逆流速度波形から拡張早期の肺動脈-右室圧較差が 1/eになるまでの時間としてRC時間echoを求めた。その結果、心エコー法によるRC時間echoは、侵襲的に求めたRC時間cathと有意に相関し(r=0.62, p<0.01)、肺動脈弁逆流速度波形に基づく肺動脈圧下降時間の計測により、RC時間の非侵襲的推定が可能であることを示した。さらに、RC時間echoは右室収縮機能指標である三尖弁輪収縮期移動距離および右室自由壁ストレインと有意に相関し、RC時間echoの短縮は経時的な右室収縮機能の低下とも関連した。検査後5年の観察期間における心臓死、心不全増悪入院、補助人工心臓植込で定義した心イベントの有無を調査したところ、Kaplan-Meier分析では、RC時間echoが中央値より短い群で長い群よりも有意に心イベントの発生リスクが高かった(p<0.05)。 右室機能障害をもたらす原因となる右室後負荷を反映する指標として、本指標が有用である可能性が示唆された。
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