2019 Fiscal Year Research-status Report
超音波を用いた生体組織構造推定と粘弾性計測を融合した慢性肝疾患の定量診断法の開発
Project/Area Number |
19K20705
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 翔平 東北大学, 工学研究科, 助教 (50815149)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 超音波医用計測 / 慢性肝疾患 / 粘弾性計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,慢性肝疾患の極早期診断の実現に向けた定量診断法の開発を目的に,超音波を用いた粘弾性計測のための超音波エラストグラフィ法について研究を進めた。具体的には,超音波エラストグラフィ法において重要な要素を占める,超音波加振の特性について基礎実験により詳細に検討した。双方向超音波加振法では,2つの超音波加振器を用いて計測対象を局所的に加振することで,局所的な粘弾性の計測を実現する。そのため,双方向超音波加振の音場分布特性を把握することは重要である。そこで,双方向超音波加振により生成される音場分布を,ハイドロフォンを用いて計測した。その結果,双方向超音波加振法により,局所的に計測対象を加振できることを確認した。さらに,生体模擬試料を用いて双方向超音波加振による粘弾性計測を実際に行い,加振により生体模擬試料に発生する変位の空間分布計測も行った。以上の検討より,双方向超音波加振の局所的な指向性特性が明らかになり,この指向性を適切に利用することで,より局所的に粘弾性を計測できる可能性が示唆された。 慢性肝疾患の極早期診断の実現のためには,病変の極早期段階で生じる局所的な組織性状変化を計測する必要がある。そのため,2019年度に取り組んだ,超音波エラストグラフィ法を用いた粘弾性計測法の局所性に関する検討は,慢性肝疾患の極早期診断の実現に向けた重要な成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,当初の研究計画に沿い,超音波エラストグラフィ法を用いた粘弾性計測の特性について検討した。当初の計画では,局所的な粘弾性を持つ生体模擬試料や,血管などの内部構造物を再現した試料などに対して粘弾性計測を行い,その特性を評価する予定であった。しかし,研究を進める中で,超音波を用いた粘弾性計測法において重要な要素を占める超音波加振の特性を把握することが,研究課題を達成するためにはより重要であると考え,超音波加振特性について詳細に検討した。その結果,超音波加振の指向性を適切に利用することで,より局所的に粘弾性を計測できる見通しを得ることができ,研究課題の遂行において重要な成果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,これまでに開発を進めてきた超音波による慢性肝疾患の生体組織構造推定法と,2019年度に検討を進めた超音波エラストグラフィによる粘弾性計測法を融合し,両手法の欠点を互いに補い合う新しい定量診断法を開発することを目的に研究を進める。開発する新しい定量診断法は2つの手法を融合するため,基礎実験段階では解析データ量が膨大になると予想される。そこで,計測・解析を効率よく行うための自動解析プログラムを開発し,解析用PCに実装する。さらに,計測の最適化も行い,異なるパラメータを持つ複数の生体模擬試料に対して提案法を適用し,その有用性について評価する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により,2020年3月に参加を予定していた学術集会が中止となった。また,新型コロナウイルスの影響による工場などの休止に伴い,購入予定物品の年度内の納品が難しくなった。上記理由により,次年度使用額が生じた。次年度使用額分の助成金は,翌年度分の助成金と合わせて,データ解析用PCとファンクション・ジェネレータの購入,学術集会への旅費と参加費,学術論文誌への研究成果投稿料として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)