2019 Fiscal Year Research-status Report
高感度ナノバブル検出を目的とした低音圧超音波イメージング
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19K20706
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
江田 廉 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (40734273)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超音波援用ドラッグデリバリシステム / ナノバブル / 高感度検出 / パルスインバージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
微小気泡を用いた超音波援用ドラッグデリバリシステム(US-DDS)の展開において、ドラッグキャリアとして使われる気泡は従来のマイクロバブルに替わり次世代型バブル製剤であるナノバブルの使用が期待されている。しかしナノバブルはマイクロバブルに比べ超音波に対する応答感度が低く、治療効率向上のためには高感度な検出法の開発が必要になる。本研究では、研究代表者がこれまでに開発した気泡からの2次超音波信号の波動逆伝播に基づく映像化法を基盤とし、従来のパルスインバージョン法の体動ノイズに弱いという欠点を克服した高感度化を図る手法を創出することで、ナノバブルの高感度検出の新展開を生む画期的な映像系を実現する。 2019年度は以下の研究を行った。キャビテーション信号の高感度観測手法の開発のため、可視化システムの映像化原理の確立と従来法との比較を行った。 映像化原理の確立に関しては、信号をアレイ振動子で観察し、受信RFデータから波動逆伝播に基づく映像化法を可視化原理とし、超音波パルス反転送信の時間間隔を従来のミリ秒オーダーからマイクロ秒オーダーに短縮した新たなPI法(時分割PI法と呼ぶ)を適用する方法を開発した。ナノバブル適用への準備段階として時分割PI法を超音波造影剤Sonazoidに対し適用した。結果、低音圧に設定した強力超音波照射時には、2.5MHzの3次高調波である7.5MHz付近の信号が観測されるが、この3次高調波のパワースペクトラムを求めると、従来法に比べおよそ15[dB]増加した。さらに従来のPI法と時分割PI法のパルス送信間隔で像再生を行い、体動の影響に関する比較を行った。映像プローブから軸方向に遠ざかる向きへの動きの速さが3cm/s程度になると従来のPI法のパルス送信間隔ではS/N比の低下が見られたが、時分割PI法ではS/Nの低下は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の成果は、可視化システムの開発に留まらず、応用開拓に向けた研究として低音圧超音波イメージングの課題を推進できた点が挙げられる。 まず、可視化システムの映像化原理の確立については、本手法の特徴であるマイクロ秒オーダーの反転送信の複数回加算により、従来法に比べた感度向上、および体動に起因する組織信号ノイズのキャンセルが不十分という課題を克服できることを確認した。 応用開拓については、フィルタ法の適用を行い、気泡破壊に至らない気泡を選択して可視化することができた。さらに従来法との比較では、Bモード観測で使用される超音波パルスの最大音圧2.5MPaに比べ、本手法ではおよそ1/5の音圧にも関わらず、Bモード観測と比べ100倍高い感度をもつことを確認した。これらを合わせると低音圧超音波送信に伴う低出力化により新たな応用が考えらえれる。低音圧化が達成されれば製薬分野での気泡製剤開発の発展に寄与するだけでなく、近年骨折治療などで注目されている低音圧超音波治療への応用が可能となり、低出力・高感度な「新たな検出法」を開発・実現する可能性がある。今後、低音圧超音波治療への応用をさらに進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度の研究成果を展開し、可視化システムのナノバブルへの適用および生体応用を見据えた実験に取り組む。ナノバブルへの適用では、マイクロバブルとの比較により、気泡径・シェル物性等の気泡の質的情報と本手法で得られる信号解析により気泡の特性化を図る。さらに生体応用を見据えた実験として細胞に取り込まれた気泡からの微弱信号検出について検討する。本手法では励振用超音波の低音圧化により、気泡破壊を伴わない検出が可能となるため、低音圧照射時の生体作用との関連を調査する。細胞への取り込みを行うためマクロファージ細胞を用いたファントム実験を行う予定である。細胞への取り込み時間や取り込まれた後の気泡のライフタイムについてマイクロバブルとナノバブルを評価し比較を行う。蛍光顕微鏡光学観察システムを組み合わせることで、本手法で得られる結果の解析項目と生体効果が相関を示すパラメータを統計的に評価する。さらに構成した可視化システムを用いて医学を専門とする研究協力者とともに実験動物での評価を行い、可視化システムの超音波支援DDS における有効性を明らかにするとともに、本システムを用いたDDS の高効率化のための気泡制御技術について検討する。これら成果をまとめて内外の関連学会で報告する。
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Causes of Carryover |
研究進捗との調整により物品購入に遅れが生じたが、令和2年8月中に次年度使用額としての請求分は執行済みとなる見込み。
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