2019 Fiscal Year Research-status Report
フレキシブル薄膜センサーシートを用いた新規遠隔型長時間心電記録計の臨床応用
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19K20710
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村瀬 翔 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30762538)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パッチ型心電計 / 多電極 / 心房細動 |
Outline of Annual Research Achievements |
フレキシブル薄膜センサーシートを用いた多電極パッチ型心電計への臨床応用を目標として、令和元年度内で、心電図測定および解析の各パーツにおいてプロトタイプモデルの試作と統合を行った。まず、PGV株式会社と共同で、フレキシブル薄膜センサーシートと送信モジュールを心電図測定に適した形態へ改良し、Bluetoothを介したワイヤレスシステムにより、対応PCに波形表示とデータ保存が可能となるプロトタイプシステムを構築した。このプロトタイプシステムを用いて、健常人を対象とした心電図記録計基本性能の検証を進めている。大阪大学医学部附属病院において倫理委員会承認を得た上で 公募にて研究協力同意を得た約30名の健常人において、本センサー、12誘導心電計、パッチ型心電計を同時に装着し、心電図の実測を行った。各人において本センサーの装着時間は20~30分程度であったが、いずれの症例でも皮膚症状などの有害事象は確認されなかった。目視では、本提案センサによる心電図波形描出性能は良好であると考えられたが、より膨大なデータの処理と、統計学的な性能検証も必要と考えられた。そのため、大阪大学産業科学研究所と共同で、測定した心電図を自動判読するアルゴリズムを開発中(令和元年度終了時点)であり、上述の健常人心電図をサンプルデータとして、自動判読精度を向上させる作業に取り組んでいる。令和元年度終了時点において、R-R間隔については、既存の12誘導心電計・パッチ型心電計のいずれとも極めて良い相関を示せたが、その他のパラメーター解析では、さらに機種間の相関を向上させる必要があるものと認識している。次年度の目標として、実臨床のベッドサイドにおいて、心房細動などの異常心電図の実測解析を試せるようなプロトタイプパッケージを目指していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点での令和元年度目標としては、健常人における長時間心電図記録計基本性能の検証を目標としており、10時間程度の連続測定を想定していた。しかし、今年度の測定システムのプロトタイプバージョンでは、そこまでの長時間測定に耐えうるプロファイルは有していなかったため、まずは短時間での正常心電図をサンプルデータとして取得し、心電図各パラメータにおける既存心電計測定結果との誤差および相関を検証する方針とした。既存心電計として、12誘導心電計はECG-2450(日本光電)、パッチ型心電計はDuranta(株式会社ZAIKEN)を使用し、各デバイスで測定した心電図データを各付属解析ソフトにて解析した結果を対照とした。本提案センサーで測定した心電図データについては、新しく開発した本提案センサー専用解析アルゴリズムで自動判読を行い、データ処理が可能であった29例について対照と比較し、RR間隔・PR間隔・QT間隔・QRS間隔について相関を検証した。なお、RR間隔は3機種間での比較としたが、PR間隔・QT間隔・QRS間隔については本提案センサーと12誘導心電図の2機種間での比較とした。R-R間隔については、本提案センサーと他デバイスの相関係数はいずれも0.9以上であり、極めて良い相関を示した。PR間隔とQT間隔については、相関係数0.5~0.7とある程度の相関を認めたが、QRS間隔では2機種間での相関を認めなかった。上記結果から、申請時点の研究計画から大きな逸脱はないものと判断し、本提案研究は、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は、心房細動検出においてすぐれた性能を有する新規多電極パッチ型心電計の導出であり、今年度は正常心電図を対象とした基本瀬能評価、次年度は異常心電図を対象とした観察研究の遂行を目標としている。 今年度の基本性能評価において、RR間隔については実用性を感じたが、それ以外のパラーメーターについては精度向上が必要と考えられた。これらパラメータにおける結果の差は、変曲点のとらえにくさによるものと考えられる。すなわち、R波は高振幅かつ鋭い波形となるため変曲点が非常にとらえやすいのに対して、他の波は低振幅であり波形の立ち上がりが緩やかであることが多いため、変曲点を正確にとらえるアルゴリズムの構築が難しい。対応策として、本提案センサは6電極を使用することで15パターンの心電図を同時記録しているという特徴を生かし、ニューラルネットワークなどを活用することで低振幅波形の解像度を大幅に向上させることを検討している。 また、異常心電図を対象とした観察研究を行うには、端末の小型化が必須である。今年は、動作環境がPCに限定されていたが、PGV株式会社の協力の下、Android対応アプリケーションの開発が進んでおり、より小型のタブレットでの波形表示およびデータ保存が可能となりつつある。今後、上述のハードウェアおよびソフトウェアの改良を進め、実臨床での観察研究へと導出していく。
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Causes of Carryover |
必要としていた消耗品が、物流調整上入手できなかったため、次年度使用額として残存した。翌年度分予算執行額と合わせて、引き続き本研究に必要な項目に対して適切に使用していく。
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