2019 Fiscal Year Research-status Report
超音波応答性マイクロバブルを用いた脳腫瘍への薬物送達技術の開発と治療戦略の構築
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19K20717
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小俣 大樹 帝京大学, 薬学部, 助教 (80803113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロバブル / 超音波 / 脳 / 腫瘍 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
脳腫瘍に対する薬物治療において高い効果を得るためには、薬物を脳実質に存在するがん細胞に対して効率的に送達することが重要である。しかし、脳には血液と脳実質の間の物質移行を厳密に制御する血液脳関門が存在し、薬物移行が制限されてしまう。本研究では、超音波とマイクロバブルを用いた脳腫瘍への薬物送達技術の開発と治療戦略の構築を行う。 本年度は脳腫瘍モデルマウスの作製方法の確立と薬物送達のための超音波照射条件およびマイクロバブル投与条件の検討を行った。神経膠芽腫は脳腫瘍のなかでも悪性度が高いことが知られている。そこで、神経膠芽腫に注目し、マウス神経膠芽腫細胞を移植した脳腫瘍モデルの作製方法の確立を行った。まず、ルシフェラーゼ発光を指標にして経日的に脳腫瘍増殖を評価するため、ルシフェラーゼ安定発現細胞株を作製した。この細胞をマウス脳線条体に移植し、経日的にルシフェラーゼ発光の測定を行ったところ、移植後の日数に依存してルシフェラーゼ発光量の増大が認められた。また、脳切片のヘマトキシリン・エオジン染色の結果から、神経膠芽腫細胞は脳実質で増殖し、正常組織に浸潤する様子を確認した。これらの結果から、ルシフェラーゼ発光を指標に腫瘍増殖を評価可能な脳腫瘍モデルマウスを作製できたと考えられた。次に、脳への効率的かつ低侵襲的な薬物送達のために、超音波の強度、照射時間およびマイクロバブル投与量について評価した。超音波の強度、照射時間依存的にモデル薬物の脳内への移行率の上昇が認められた。一方で、赤血球の血管外への漏出が観察された。また、薬物デリバリーに適したにマイクロバブル投与量が存在することを確認した。以上の結果から、低侵襲的にモデル薬物を脳実質へ送達可能な条件を明らかにした。来年度は抗がん剤を用いて、超音波とマイクロバブルによる脳腫瘍治療について検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はルシフェラーゼ安定発現神経膠芽腫細胞を作成し、脳腫瘍モデルマウスの作製方法を確立した。ルシフェラーゼ発光を指標に腫瘍増殖を評価していくことで、今後の研究を効率的に進められると考えている。また、超音波照射条件およびマイクロバブル投与量について検討し、低侵襲的に血液脳関門をオープニング可能な条件を明らかにした。本年度は脳腫瘍への薬物送達のためのマイクロバブルの最適化を行わなかったが、ルシフェラーゼ安定発現細胞株の作製を行い、次年度以降に予定していた抗がん剤を使用した実験を一部進めた。そのため、当初の研究計画を遂行できると想定しており、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳腫瘍モデルマウスにおいて超音波とマイクロバブルによる血液脳関門の透過性亢進の特性評価を引き続き行う。得られた結果をもとに、マイクロバブルの外殻組成、内包ガスまたは粒子サイズなどを最適化し、脳腫瘍に対する超音波薬物送達システムを構築する。また、実際に抗がん剤 (テモゾロミド、ドキソルビシン、シスプラチン) を使用して、超音波とマイクロバブルを用いた薬物デリバリーによる脳腫瘍治療効果を評価していく。併せて、免疫調整効果にについて検討していく。
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Causes of Carryover |
ルシフェラーゼ発現神経膠芽腫細胞の作製を進めていたため、脳腫瘍モデルマウスの確立に時間を必要とした。そのため、本年度は動物実験があまり進められず、次年度使用が生じた。
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Research Products
(4 results)