2020 Fiscal Year Research-status Report
超音波応答性マイクロバブルを用いた脳腫瘍への薬物送達技術の開発と治療戦略の構築
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19K20717
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小俣 大樹 帝京大学, 薬学部, 講師 (80803113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超音波 / マイクロバブル / 脳 / がん / 免疫療法 / 血液脳関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超音波とマイクロバブルを用いた脳腫瘍への薬物送達技術の開発と治療戦略の構築を行う。本年度はマウス神経膠芽腫に対する種々の抗がん剤の影響を検討し、超音波とマイクロバブルを用いた抗がん剤デリバリーによる脳腫瘍モデルマウスに対する治療効果を評価した。まず、種々の抗がん剤を用いて、マウス神経膠芽腫の細胞増殖率に対する50%阻害濃度 (IC50) を検討した。その結果、神経膠芽腫に対する既存の治療薬であるテモゾロミドと比べて、ドキソルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセルのIC50は低値であった。そのため、これらの抗がん剤を効率的に脳腫瘍へと送達することで、高い抗腫瘍効果が得られる可能性が考えられた。そこで、様々ながん治療に使用されているプラチナ製剤であるシスプラチンに注目し、超音波とマイクロバブルを併用した脳腫瘍治療について検討を行った。脳腫瘍モデルマウスを作製し、シスプラチンとマイクロバブルの混合液を静脈内投与し、直ちに経頭蓋的に脳腫瘍に向けて、超音波を照射した。その後、同様の処置を2回行い、生存日数を指標に治療効果を評価した。平均生存日数は未治療群で約26日、シスプラチン単独治療群で29日、超音波とマイクロバブルを併用したシスプラチン治療群で40日以上であった。カプランマイヤー法による評価を行ったところ、未治療群およびシスプラチン単独治療群と、超音波とマイクロバブルを併用したシスプラチン治療群の間に有意な差が認められた。この結果から、超音波とマイクロバブルを併用することで脳腫瘍に対するシスプラチンの治療効果を増強できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、種々の抗がん剤を用いて、神経膠芽腫細胞に対する殺細胞効果、また、免疫調整作用に関与することが報告されているカルレチキュリンの細胞表面への露出について評価した。脳腫瘍モデルマウスでの治療効果および免疫調整効果を評価するための基礎的な知見を得ることができた。また、超音波とマイクロバブルを用いた血液脳関門の透過性亢進技術によって抗がん剤デリバリーを試み、脳腫瘍モデルマウスに対する治療効果を検討した。シスプラチンに超音波とマイクロバブルを併用することで、脳腫瘍に対する治療効果の増強が認められた。また、超音波とマイクロバブルによる血管透過性亢進に伴うトランスポーターへの影響を評価するために、蛍光免疫染色法を用いたP糖たんぱく質の検出法の確立を行った。超音波とマイクロバブルを併用することで、抗がん剤の治療効果増強に成功していることからも、脳腫瘍に対する治療戦略の構築に向け研究を遂行できると想定している。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
超音波とマイクロバブル併用による抗がん剤の治療効果増強のメカニズムを明らかにするため、脳腫瘍内への薬物移行量を検討する。さらに、他の抗がん剤 (テモゾロミドやドキソルビシン、他のプラチナ製剤) を用いて、超音波とマイクロバブルを併用した治療効果の増強について検討する。治療効果の増強が得られた条件を中心に、免疫細胞の移入や分布などを評価し、免疫調整効果を検討する。また、超音波とマイクロバブルによる血管内皮細胞のタイトジャンクションやトランスポーター発現などへの影響についても検討する。多方面からのアプローチにより、効果的な脳腫瘍治療戦略の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響によって、一部期間、実験が進められなかったことから、次年度使用が生じた。
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