2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢者における精神神経系薬の有害作用発現と多剤服用による相互作用の定量的評価
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19K20736
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
岡田 章 武蔵野大学, 薬学部, 助教 (50825320)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢者薬物治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和二年度は, 昨年度までに80歳以上の患者でせん妄および転倒・骨折といった老年症候群が有意に発現しやすいと同定された催眠鎮静薬であるトリアゾラム (TRZ) を用量調節の実施がさらに必要な典型的な医薬品として種々の検討を実施した. 有害事象発現傾向は日米の副作用自発報告データベース (JADER, FAERS) に報告されたデータを用いて, 高齢者におけるAE発現リスクを報告オッズ比にて評価した. 処方実態の解析には第4回NDBオープンデータを用いた. また, 既報より血中濃度および鎮静・認知機能の推移を抽出し, 鎮静・認知機能の悪化が生じるTZR濃度のカットオフ値を算出した. 得られた情報よりPK/PDモデルを構築し, 高齢者における用法・用量を検討した. 【結果】本邦では, TZR全処方の50%が70歳以上に投与されており, 処方の86%がCYP3Aの基質薬と併用, 8.6%がTZRのAUCを1.25倍以上上昇させる阻害薬との併用であった. 日米副作用データベース解析より, せん妄でAE発現シグナルが検出され, 高齢者において発現しやすい傾向であった. 鎮静および認知機能の悪化が発現する濃度はいずれも約0.5 ug/mLであった. Effect compartmentを用いて血中濃度と鎮静・認知機能の推移を連結させたPK/PDモデルを構築し, 高齢者にTZRを0.0625 mg (0.125 mgの半錠) で投与した時に許容可能な併用薬のについて検討した. その結果, 高齢者にはTRZを0.0625 mgで投与した場合においても, AUCが 2.27倍以上の増加する薬剤と併用すると, 薬物の消失が大きく遅延し, 翌朝のAE発現リスクが増加する可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度の初めは, 大規模データベースおよび解析ソフトを取り扱える施設の利用が大きく制限されていたため, データの抽出および解析は完了しているものの, 未だ原著論文としてpublishするに至っていない. 現在は投稿作業中であるため, 速やかに完了させたい. 本年度に得られた成果は, 日本薬学会 第141年会にて公表した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに構築した薬物曝露等を定量的に評価可能な体系を他の薬剤においても適応可能かを検討し, より有効で安全な薬物治療に資する情報の構築を目指す.
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Causes of Carryover |
投稿を予定している原著論文の投稿関連経費および一部データベースの利用料に充当する.
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