2018 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の失禁関連皮膚炎に対する新たな予防法の開発―細菌による尿素分解に着目して
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17H06648
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
麦田 裕子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (00804874)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2020-03-31
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Keywords | 失禁関連皮膚炎 / アンモニア / 尿素分解酵素 / 尿素 / 細菌 / パッド |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】尿便に曝露した皮膚では、便中細菌が尿中尿素を分解しアンモニアを発生させることで、pHが上昇し、失禁関連皮膚炎の発生原因(消化酵素・細菌)が影響を及ぼしやすい状態になる。細菌による尿素分解の抑制が失禁関連皮膚炎の発生予防につながると考えられ、そのコンセプトとして、抗菌剤とウレアーゼ(尿素分解酵素)阻害剤を併用することが効果的であると考えられる。平成29年度に実施したin vitro実験でのコンセプト検証の結果、抗菌剤およびウレアーゼ阻害剤の両者が存在することにより、細菌による尿素分解が抑制され、pH上昇要因であるアンモニア産生量が減少することが明らかとなった。この知見に基づき、抗菌剤およびウレアーゼ阻害剤の両者を含有する新規パッドがIAD予防に効果的であると考え、産学連携で開発中である。 【本年度実施内容】 細菌による尿素分解の抑制をコンセプトとした試作パッドのpH上昇抑制効果について予備検討を行った。①人尿に細菌を添加し(最終OD=0.1)、試作パッド(抗菌剤・ウレアーゼ阻害剤を両者含有)および従来パッド(抗菌剤・ウレアーゼ阻害剤をいずれも含まない)に滴下した後、37度でインキュベートしながらパッド表面pH、におい強度を経時的に測定した。②健常者1名を対象とし、試作パッドあるいは従来パッドを装着した状態で排尿した後の、皮膚pH、パッド表面pH、におい強度を経時的に測定した。 結果、いずれの実験でも試作パッドのpH上昇抑制効果およびにおい抑制効果は認められなかった。パッド内に滴下された人尿が、抗菌剤・ウレアーゼ阻害剤と効果的に接触するよう、抗菌剤・ウレアーゼ阻害剤のパッド内の固定位置を改良する必要があると考えられ、パッド開発のための重要な示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度初めに予定していた試作パッドのpH上昇抑制効果の予備検討を、予定通り実施できたため。予備検討の結果、試作パッドの改良が必要となり、予備検討期間を延長することになったが、新規パッドの臨床評価に向けて、pH上昇抑制効果が期待されるパッドを開発することが求められるため、今回の予備検討期間の延長は有意義なことと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitro実験の知見に基づいて試作された、抗菌剤・ウレアーゼ阻害剤を含む新規パッドを用いて、健常人にてpH上昇抑制効果の予備検討を行ったうえで、そのIAD予防効果を評価するために臨床研究を実施する。 臨床研究では、研究参加者を新規パッド使用群と従来パッド(細菌による尿素分解抑制効果を有しないパッド)使用群の2群にランダムに割り付け、各パッドを一定期間使用後、IAD発生率・重症度、皮膚生理機能変化を群間比較する。
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