2017 Fiscal Year Annual Research Report
ペリオスチンを基盤とした皮膚悪性腫瘍における発症と悪性化機序の解明、治療法の確立
Project/Area Number |
17H06957
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
増岡 美穂 佐賀大学, 医学部, 非常勤博士研究員 (70588699)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | 免疫学 / 皮膚悪性腫瘍 / 悪性化 / ペリオスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞外マトリックスタンパク質であるペリオスチンを基盤とした皮膚悪性腫瘍における発症と悪性化の機序の解明、ペリオスチンがバイオマーカー、さらには創薬の標的となりうるか検討することを目指す。 1,ペリオスチンによる皮膚悪性腫瘍の発症と悪性化機序の解明(1) 皮膚悪性腫瘍においてペリオスチンを誘導する因子の同定:マウスの線維芽細胞を腫瘍関連のサイトカインで刺激し、ペリオスチンの発現が誘導されるかどうか解析した。IL-13,TNF-α,TGF-βによりペリオスチンの発現は強く誘導された。(2)皮膚悪性腫瘍におけるペリオスチンの作用の解析および協調的に作用する因子の同定:ペリオスチンをプレートにコートした単層培養でIL-13,TNF-α,TGF-βで刺激し、腫瘍細胞の形体や増殖、生存などを解析したが、明らかな増殖や生存に差はなかった。 2,ペリオスチンの皮膚悪性腫瘍バイオマーカーとしての検討 皮膚悪性腫瘍患者検体における解析:血管肉腫患者10例の皮膚組織を免疫染色し、腫瘍細胞周囲にペリオスチンが強く沈着した。また、基底細胞癌の中でも浸潤傾向の強いモルフィア型の患者10例の皮膚組織において腫瘍細胞周囲にペリオスチンが強く沈着した。一方、基底細胞癌でも浸潤傾向のない結節型などの患者組織20例ではペリオスチンは沈着しなかった。また、血清中のペリオスチンを測定できるELISA法により、皮膚悪性腫瘍患者の血清中のペリオスチンを解析した。血管肉腫患者8例、基底細胞癌患者12例の血清中のペリオスチン値を測定したが、健常者と比べ明らかな上昇を認めなかった。 これまでの解析において、皮膚組織の免疫染色の結果より、ペリオスチンは悪性度を反映したバイオマーカーであり、EMT(上皮間葉転移)に関与している可能性を考える。EMTを制御することは悪性化を抑制することであり、新しい癌治療戦略と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
皮膚悪性腫瘍患者検体における解析については、おおむね順調に進んでおり、皮膚組織の免疫染色の結果は、予想通りにペリオスチンの沈着の程度は悪性度を反映した結果となっている。一方、3次元細胞培養法の解析は、野生型またはペリオスチン欠損マウスの線維芽細胞とcell lineの共培養を行ったが、マウスのプライマリーケラチノサイトと線維芽細胞を用いた実験ほど表皮の構築がみられず、条件設定を再度検討している状況である。また、皮膚悪性腫瘍デルマウスのペリオスチン欠損マウスへの適用と解析は、ペリオスチン欠損マウスがなかなか生まれず数が揃わないため行うことができない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1,ペリオスチンによる皮膚悪性腫瘍の発症と悪性化機序の解明 (1)皮膚悪性腫瘍におけるペリオスチンの作用の解析および協調的に作用する因子の同定:3次元細胞培養法の解析を進め、腫瘍細胞の形体や浸潤、増殖、分化などをみることで、EMT、悪性化にペリオスチンが関与しているか検討する。 (2)皮膚悪性腫瘍デルマウスのペリオスチン欠損マウスへの適用と解析:皮膚悪性腫瘍におけるペリオスチンの生理的役割を解析するために、マウスの足底に皮膚悪性腫瘍細胞(血管肉腫や基底細胞癌のcell line)を注射し、病変部のペリオスチンの発現を解析する。また、野生型とペリオスチン欠損マウスを用いて注射部位の腫瘍巣の増殖や局所浸潤度、またリンパ節や他臓器への転移を解析する。 2,ペリオスチンを標的とした皮膚悪性腫瘍に対する治療薬の検討 抗ペリオスチン抗体の皮膚悪性腫瘍モデルマウスに対する効果の解析:皮膚悪性腫瘍モデルマウスに抗ペリオスチン抗体を皮下投与し、腫瘍巣の増殖や局所浸潤度、またリンパ節や他臓器への転移などで、症状の改善を評価する。これにより、ペリオスチンが皮膚悪性腫瘍の創薬の標的となりうるか検討する。
|