2019 Fiscal Year Annual Research Report
フランス現象学を背景とした後期レヴィナスの人間観の歴史的・体系的研究
Project/Area Number |
19K20766
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平岡 紘 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00823379)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | レヴィナス / 現象学 / フランス哲学 / 自己性 / 記号 / 音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、E・レヴィナスが1960年代後半以降に展開する「他者の人間主義」の思想の内実と独自性を明らかにすることを目的として、(1)人間をめぐる後期レヴィナスの思索を体系的に分析すること、そして同時に(2)1960年代のフランス現象学者たちの人間観の布置を描き、そこにレヴィナスの人間観を位置づけること、この二点を方法の柱として、「自然と人間の関係」と人間固有の特性としての「自己意識」の二点について、後期レヴィナスの人間観を研究するものである。 本年度は、前年度の成果を承け、自己意識をめぐるレヴィナスの思索の研究を続けた。「自らが話すのを聞く」という声の複合的現象を自己性の形象とみなす同時代のフランス現象学の主潮に鑑み、レヴィナスの後期著作において多用される音声に関連する表現に着目し、後期レヴィナスの思索を分析するための基礎作業として、口頭での他者との対話によって知と理性的思考を基礎づけるというレヴィナスのテーゼの内実を、レヴィナスによる音の分析および記号とその意味作用の分析を検討することを通じて考察した。並行してM・デュフレンヌによる聴覚、音の分析を読解した。この研究の結果として、①レヴィナスが言語を、音がどのようにして意味をもつ記号としての語となっていくのかを考察するという仕方でとらえつつ、言語の記号性に理性的思考の条件を見出していること、②レヴィナスにおいて、語は音である限り、それを発するものの他性を響かせるものとして記述されていることを明らかにし、かつ③レヴィナスの言語論は、音を他性と結びつけてとらえる点で、デリダ的な音声中心主義とは区別されることを示唆した。以上の成果を2019年11月にレヴィナスをめぐる国際シンポジウムにおいてフランス語で発表し、またフランス語の学術論文として日本哲学会の欧文研究誌に投稿、査読を経て掲載が認められた。
|