2018 Fiscal Year Annual Research Report
Formation of "Persian" Art and its Impact on Nihonga (Japanese-style Painting), Yoga (Western-style Painting), and Crafts in Modern Japan
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18H05556
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神田 惟 東京大学, 東洋文化研究所, 特任研究員 (20823462)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | オリエンタリズム / ペルシア美術(ペルシャ美術、波斯美術) / ペルシア陶器(ペルシャ陶器、波斯陶器) / 山口蓬春 / 伊東深水 / 戦後日本美術 / コレクション史 / イスラーム美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる2019年度は、日本国内における調査・研究に重点を置いた。具体的には、設備備品費を、近代日本画家・洋画家・工芸家の作品にする和書(展覧会図録や私家本含む)や、オリエンタリズム・西アジア美術品の収集史に関する欧文研究書の購入に充て、戦後の日本という特殊なコンテクストにおける「ペルシア/波斯」美術受容という特殊な事例を、いわゆる既存の「オリエンタリズム」研究や「日本美術」研究、「ペルシア美術」研究のコンテクストに位置付けて議論するための前提条件を整えた。 本年度の主なアウトプットとしては、2019年3月8日に、東京大学東洋文化研究所3階第一会議室にて、東京大学東洋文化研究所班研究「イスラーム美術の諸相」班との共催で、東文研セミナー「近代以降日本人は『イスラーム美術』品をどう見たか」を開催したことが挙げられる。当該セミナーでは、研究遂行者自身が「描かれたペルシャ(波斯):戦後の日本画家・洋画家が見たペルシャ陶器」という題目で研究報告(60分)を行ったほか、ゲストとしてイスラーム化以降の西アジアのテキスタイルを専門とする慶應義塾大学経済学部准教授の鎌田由美子氏を招待し、「イスラーム美術」品の収集に関しては、欧米と比して後発国であった日本において、それらがどのような独自の文脈で解釈され、受容されてきたのかについて、染織品と陶器という二つのメディアに焦点を当てて検証した。本セミナーでは一般の方から隣接諸分野の専門家に至る34名の参加者を得た。研究報告後はフロアを巻き込んで活発な意見交換が行われ、この研究テーマへの潜在的な関心の高さが明るみになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年3月8日に、東京大学東洋文化研究所班研究「イスラーム美術の諸相」班との共催で、東文研セミナー「近代以降日本人は『イスラーム美術』品をどう見たか」を開催し、当初予定していたよりも早く研究成果を世に発信することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果をふまえ、国内の美術館(e.g. 山口蓬春記念館)のほか、ニューヨークでのメトロポリタン美術館における所蔵品調査を予定している。山口蓬春記念館においては、戦後におけるペルシャ陶器画ブームの先鞭を着けた山口蓬春自身の作品や所蔵したペルシャ陶器を調査する。また、ニューヨークのメトロポリタン美術館では、考古学的発掘によって得られたニーシャープール製の多彩釉刻線文陶器の調査を行う。 アウトプットの場としては、2019年9月30日に神戸大学国際文化学研究科で予定されているシンポジウム「イスラム美術コレクションの形成と普及ー東洋と西洋の眼差しの交叉」がすでに決定している。本シンポジウムでは、西洋におけるイスラーム美術品収集時および、収集品から着想を得た作品の製作時におけるイスラーム美術品に対する「まなざし gaze」との比較を行うことで、より広義な「オリエンタリズム」研究のコンテクストに位置付ける。 国内のオーディエンスへの問題提起をしたのちは国内最大の美術雑誌『美術史』(2019年6月末日〆切)に投稿するのがふさわしいと考えられる。4月初旬より執筆を開始予定のこの論文では、1950年代後半以降の日本における「ペルシア/ペルシャ/波斯」観形成の過程を、①展覧会におけるペルシア陶器の展示、②国内におけるペルシア陶器の収集、③画家たちによる創作活動を包括的に分析して明らかにする。学事歴の都合上、ニューヨークでの調査を行うことができるのは現実的に考えて2020年1月下旬以降となるため、欧米のオーディエンスに向けた発信(投稿先としては毎年2月末日〆切のMuqarnasを想定)は場合によっては2020年度以降に繰り越す可能性がある。
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