2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Representation of "Children" in Audiovisual Media during Wartime/Postwar Japan
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18H05559
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北村 匡平 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (70826502)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 子供 / 民主主義 / 占領期 / ポスト占領期 / ジェンダー / プロパガンダ / 国策映画 / 児童映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1940年代から50年代の日本映画で「子供」がいかに表象され、受容されたのかを歴史的に調査することによって、戦時期のナショナリズムや戦後民主主義の思想体系に「子供」がどのように組み込まれていったのかを明らかにすることを目指している。フィクションの中で「子供」がいかなる役割を担い、どのような機能を果たしているのかを分析して、受容言説との関係を捉えること、すなわち表象分析と言説分析を組み合わせるアプローチで研究を進めた。 まずは該当する時期における映像作品を収集し、アーカイブ化して整理した。まだ途中だが、主に戦中の作品を中心にあつめ、さらに同時期に発行されていた映画雑誌の言説やイメージも分析するために国会図書館で資料を集めた。 とりわけ戦前から戦時期にかけて「子供」を表現した監督に清水宏がいる。そこで清水の児童映画をテクスト分析し、その成果を日本映画学会大会で報告した。質疑応答では、初期映画の技法の影響やハリウッド映画の影響に関する指摘を受け、有意義な意見交換をして視野を広げることができた。その後、コメントで指摘された子供をあつかって影響を及ぼした可能性があるハリウッド映画や清水が影響を受けている日本映画を収集した。 また本研究では子供がどのように女性表象と関わり合っているかも重視しているため、映画女優とその表象についての書籍も刊行した。今後は、戦時期のプロパガンダ映画における「子供」を多角的な視点から分析していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
助成の開始が夏頃だったため、まずは秋から冬にかけて資料収集に専念した。研究対象としている時代が幅広いため、本年はとくに戦前から戦中にかけて、とりわけ「児童映画」というジャンルを確立した清水宏に焦点をしぼった。また清水映画のみならず、戦前から戦時中にかけて「子供」がどのようにあつかわれていたのかをとらえるため、教育学や文学に学問領域まで広げて関連する文献を集めた。言説の分析については、主に国会図書館を中心に映画雑誌や娯楽雑誌などの資料をあつめてアーカイブした。 それらの資料とあわせて清水映画の分析を進めた。清水映画に関しては、「メディアにおける戦後民主主義のイメージ——〈子供〉はいかに語られたのか」というタイトルで、日本映画学会 第14回全国大会(大阪大学) において報告した。発表後に有意義な意見交換もでき、今後の見通しが立った。 映画女優と表象に関しては単著『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩選書、2019年) を刊行し、男性俳優に関しての論考をおさめた共編著『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)も出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は戦時期のプロパガンダ映画と戦後に製作された民主主義啓蒙映画における「子供」の表象を分析していく必要がある。また戦後に作られていたCIE映画のなかでも、子供に焦点化したものは、あわせて分析を進めていく。 資料に関しては、時期と製作された場所を広げて、幅広く収集していく。とはいえまだ戦前から戦中のものであっても未見の作品もたくさんあるため、DVDで手に入るものを収集しながら、VHSしかないものに関しては、VHSをDVDへとアナログ変換を行う。アーカイブ化したものは、研究室所属の学生や研究生に人件費を支払って整理をしてもらう予定である。 古い映像資料は、フィルムとして残っていてもDVDやVHSになっていないものもある。これらの中で重要なものに関しては、国立映画アーカイブにフィルムがある場合、特別上映してもらい分析を進めて行く。今年度、行けなかった松竹大谷図書館、川喜多映画記念館が所蔵する資料にも今後アクセスしたい。2019年度に予定していた国内学会での発表を2018年に行ったため、もともと実施する予定だった海外での資料調査に今後行く予定である。 現在、予定しているのは、米国のコロンビア大学にあるマキノコレクションやメリーランド大学にあるプランゲ文庫である。また国内でも神戸映画資料館や地方にある各資料館にも出張して資料を複写したい。その成果を再び、学会発表で報告する。
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Research Products
(4 results)