2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Study of Korean-Japan Theatrical Exchange in 1990s especially concerning a Playwright Rio Kishida's activity
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18H05563
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 蕗子 大阪大学, 文学研究科, 助教 (40823779)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 日韓演劇交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、劇作家岸田理生の1990年以降の韓国演劇界との交流の様相を調査し、岸田の問題意識の所在を、作品分析を通して明らかにすることを目的とするものであった。 一年目には韓国を訪問し、諸関係者への聞き取りを行うと共に、ソウルの前衛的小劇場「恵化洞一番地」に招聘されて、岸田が旧知の俳優・スタッフと共に創り、上演をした作品『二人ぼっち』(1995)に関わる資料の収集を行い、パンフレットや台本などを集めた。 聞き取りより、岸田が個人的な関係を紡ぎながら人と出会い、韓国文化についての知識を得、日韓の歴史に関する問題意識を深めていった過程が明らかになった。作品上演を前提とした交流というよりは、同時代に生きる女性として、また創作者としての私的な連帯感によって形成されたものであり、そのためか聞き取りから岸田の当時の問題意識の在り方を聞き出すことは難しかった。一方で、岸田が韓国の演劇関係者から創作の手法における影響を受けていた可能性は感じられた。そのことは戯曲分析を通して今後検討していきたいと考えている。 資料の収集に関しては、残念ながら『二人ぼっち』に関する批評資料を見つけることはできず、上演の様子はわかるものの、当時の韓国演劇界においてどう受容されたかを伺い知ることは難しかった。一方、『二人ぼっち』とは関係の無い演目ではあるが、岸田が現地で観劇した演目が推測できる資料を見つけることができ、韓国での彼女の足取りの一端を伺い知ることができたのは貴重な収穫であった。 集めた資料は、現在国内で保管されている資料と共に整理をして、後に調書・目録・撮影画像の形で一般公開するための下準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力者の事情により、平成30年度中の本格的な聞き取り調査が難しくなったため、予算の繰越申請を行い、本格的な聞き取り調査を次年度に行うことになった。また、資料収集の面では想定外の貴重な収穫があった一方で、本研究課題の遂行に必要な資料を見つけることが難しかった。そのような状況の中、成果発表を予定していた平成30年11月開催の学会での発表応募締め切りまでに研究を纏めるに至らなかったために、やや遅れていると判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度には韓国を再訪問し、今年度確認できなかった資料の追加収集と本格的な聞き取り調査を進めていく予定である。主に岸田が韓国の演出家のために書いた『人間リア』(1998)の上演台本や当時の映像、批評等を確認し、シンガポールの演出家のために書いた岸田の元戯曲『リア』と、演出家が変更を加えた上演台本版の『リア』との比較検討を行う。適切な発表場所を探し、入念な準備の上で平成30年度の業績も含めて成果発表を行う。 同時に、集めた資料を整理し、アーカイブ化を進めるための作業も進めていく。平成30年度の段階で、関係者が多く資料の公開許諾を取る手順が想定よりも多く、時間がかかると判明しているため、権利関係で問題の生じないように適切に対応していく。
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