2018 Fiscal Year Annual Research Report
Image theory and body langage of the 17th and 18th Centuries in France
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18H05564
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川野 惠子 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (40639853)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ディドロ / メネトリエ/メネストリエ / 像理論 / 身体言語 / 演劇 / 感性的認識 / ヒエログリフ / 視覚言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、演劇領域における身体言語の興隆をリードした17世紀メネトリエ、18世紀ディドロの著した像理論を取り上げ、1)これら像理論において像の指示機能はいかに定義されているのか、2)以上の定義は、身体言語(視覚言語)の問題にいかに応用されているのかを考察する。 メネトリエについては、『謎めいた像の哲学』(1694年)の精読を行い、その像理論の根底に、像は表すのではなく、隠匿するという神学的像概念の伝統があることを指摘するところまで進めた。神学の伝統に基づく像理論において、像は神を隠すと考えられ、その間に絶対的なヒエラルキーが構築される。一方メネトリエは、オリジナルと像の間に類似というよりは差異を作り出して隠そうとする以上の像理論の中から、制作者の隠す「精神」と「技」を抽出し、この巧妙な「精神」と「技」が、像の成立要因であるとした。以上の成果については、論文「隠す精神と技──メネトリエ『謎めいた像の哲学』考」として公開した。 ディドロについては、『聾唖者書簡』(1751年)の精読を行い、ここに論じられる「ヒエログリフ」概念の分析に基づいて、演劇における身体言語の指示機能を指摘するところまで進めた。ディドロは芸術作品に起こる詩的な言語活動に「ヒエログリフ」と呼ばれる像の生成を指摘し、この像は言語の指示対象そのものを言語の受け手に感覚させるという特異な指示機能を持つ。身体言語はヒエログリフ生成にもっとも適した言語であり、ディドロはこの特異な指示機能を演劇に取り入れることで、演劇改革を試みたことを指摘した。以上の成果については、国内学会、国際学会で発表の上、論文「ヒエログリフと演劇:1750年代のディドロ」として公開した。また、アウトリーチ活動として、「詩とダンス・ワークショップ〈沈黙の語り〉」を開催し、研究成果を広く公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要に記したように、本研究課題は1)像理論全体の検討、2)像理論の身体言語への応用という二つの段階から進められる。メネトリエについては、隠匿する像概念という1)を分析するための根本的な思想を突き止めることができた。ディドロについては、ヒエログリフ概念と身体言語の関係を論証し、1)から2)へと連続的な分析を進めることができた。2018度の実施計画において、メネトリエについては国際ジャーナルへの投稿、ディドロについては、国際学会での発表、およびアウトリーチのためのワークショップを目標に掲げた。前者については、国内ジャーナルに変更したが、そのほかの計画は全て遂行し、またディドロについては、次年度の計画に掲げた国内学会発表と投稿も完了することができた。以上から、研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
メネトリエについては、音楽論、舞踊論、祝祭論を検討し、像理論の身体言語への応用を解明する。ディドロについては、昨年度研究を進めるなかで、演劇における身体言語概念が1750年代に変容したことを認めたため、この変容の起因となる思想的転換点を探ることで、その像概念をさらに精緻に分析する。最終的には、17世紀メネトリエと18世紀ディドロを系譜的に論じ、これらの時代に連続的に検討された身体言語の持つ固有の指示機能を明らかにする。メネトリエについては、国際ジャーナルへの投稿、ディドロについては国際学会発表と国際ジャーナルへの投稿、そのほか、両者に関する論考を総合する著書を執筆する。
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