2018 Fiscal Year Annual Research Report
Thinking the Body Today: Around the Thought of Philippe Descola
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18H05574
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
小林 徹 龍谷大学, 文学部, 講師 (70821891)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 人類学 / 身体 / 現象学 / 自然哲学 / フィリップ・デスコラ / モーリス・メルロ=ポンティ / ジル・ドゥルーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代の人類学者フィリップ・デスコラにおける身体概念に焦点を当て、人類学における自然概念の再構築の動き(「存在論的転回」)の哲学的射程を探るものである。デスコラの『自然と文化を超えて』(2005年)は、この動きを代表する一冊とされているものの、その全貌が明らかにされているとは言い難い。現象学的人間学に依拠しつつ、クロード・レヴィ=ストロースの構造人類学を刷新しようとするデスコラの姿勢は、人類学に新しい地平を開くものとして高く評価されているが、その哲学的射程については、数多くの批判的解釈の中でそれを吟味し、さらに確固としたものにしなければならない。 本年度は、当初の計画に従い、モーリス・メルロ=ポンティとジル・ドゥルーズの自然哲学に焦点を当てつつ、現代哲学と「存在論的転回」との関係を探り、デスコラが批判する近代西洋のナチュラリスム的枠組みの中に、すでにそれを乗り越える「存在論的転回」の萌芽が見られる点について論じた。この点については、さらにデスコラ本人にインタビューを行い、議論を深めることができた。また、ルノー・バルバラス(パリ第一大学)やエティエンヌ・バンブネ(ボルドー大学)らへのインタビューを行うことによって、現代の現象学的思考における「存在論的転回」の影響を確認することができた。 なお上記の研究成果については、「ドゥルーズとナチュラリスム:人類学的視点から」(『アルケー』第27号、関西哲学会編)、「メルロ=ポンティとナチュラリスム:文化人類学的視点から」(日本現象学会における口頭発表)、「Two Ontological Turns: Around the Question of Naturalism」(「顔身体学」シンポジウムにおける口頭発表)などに反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レヴィ=ストロース以来の人類学の流れだけではなく、現代哲学の流れの中でデスコラの思想を位置づけるという当初の計画については、メルロ=ポンティとドゥルーズにおけるナチュラリスムの検討を通じて或る程度は達成することができた。また在外研究として、予定していた研究者たちとコンタクトを取ることによって、今日的な研究状況の中で本研究の意義を再確認することができた。しかしながら、同時代のポスト構造人類学的潮流の中でデスコラの思想を際立たせるという点については、準備的な文献調査を進めるにとどまった。これらの理由から、以上の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた基礎的研究を踏まえて、進行中である『自然と文化を超えて』の訳出・注解を完成させるとともに、特に身体概念に焦点を当てて、人類学・哲学の両面からデスコラの思想の全体像を描き出すことにいっそう努める。また国内外の人類学者との交流を本年度以上に積極的に推進する予定である。
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