2019 Fiscal Year Annual Research Report
Thinking the Body Today: Around the Thought of Philippe Descola
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19K20784
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
小林 徹 龍谷大学, 文学部, 講師 (70821891)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 現代人類学 / 現代哲学 / メルロ=ポンティ / ドゥルーズ / レヴィ=ストロース / デスコラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代人類学の代表者の一人であるフィリップ・デスコラの思想を手がかりとして、哲学的言説と人類学的言説の交点で理解されるべき現代的身体論の輪郭を描き出すことであった。最終年度となる本年度は、2018年度に行ったナチュラリスムを内的に乗り越えるドゥルーズの思想に関する学会発表を論文の形に取りまとめ(「ドゥルーズとナリュラリスム:人類学的視点から」)、同年度に行われた渡仏調査におけるデスコラへのインタビューを論文として発表した(「失われた対話:フィリップ・デスコラへのインタビュー」)。特に後者では、デスコラの思想に、メルロ=ポンティとレヴィ=ストロースの間の「失われた対話」が深く影響を及ぼしている点が明らかになった。本研究の核心に触れるこの点については、メルロ=ポンティとレヴィ=ストロースの思想的対話を「野生」概念を中心に掘り下げ、この特異な概念が哲学的言説と人類学的言説の境界線上に位置していることを論じた(「野生の言説:メルロ=ポンティとレヴィ=ストロース」)。「野生」という本質的に言説的な枠組みを逸脱する概念が孕む問題性と可能性については、今後の研究でさらに展開させていく予定である。 また、デスコラの思想的背景を探る以上の諸研究と並行して、彼の主著である『自然と文化を越えて』の翻訳を完成させた。本書はレヴィ=ストロース以降のポスト構造人類学の最大の成果であるだけでなく、人間存在をめぐる哲学的あるいは人類学的言説の在り方を問い直すパラダイム・シフトの可能性を持つ問題的著作である。特に人間と環境の関係性を内面性と肉体性の組み合わせにおいて論じる視点は、近代的な「意識の哲学」を乗り越えようとしたメルロ=ポンティの身体論を現代的観点から捉え直すものである。本書の訳出は、現代的身体論の展望を切り開く一助となるだろう。
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