2018 Fiscal Year Annual Research Report
Reception of Western Classics in East Asia
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18H05586
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
泰田 伊知朗 東洋大学, 国際観光学部, 准教授 (20822076)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 西洋古典 / 受容史 / 日本 / 東アジア / ギリシャ / ローマ / ラテン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究期間中に、以下の論文を発表することができた。Ichiro Taida, 'History and Reception of Greek and Latin Studies in Japan', Almut-barbara Renger and, Xin Fan (eds.), Receptions of Greek and Roman Antiquity in East Asia, pp. 73-87, Nov. 2018. 西洋古典は西洋に起源を持つので、当然日本はある時期まで西洋古典学を欧米から受容する一方であった。この受容は16世紀にイエズス会士たちが日本に布教に訪れたことがきっかけである。彼らは学校を開き、そこでラテン語を教え、ラテン語の文法書や辞書を印刷し、イソップ物語など西洋古典文学も翻訳した。その後も受容は続いていくが、今日、日本から欧米に向けて発信する機会も増えている。日本人が研究成果を英語で発信したり、日本において世界的な研究会が開かれることもある(例えば2010年の東京における国際プラトン学会)。こうした一方的な受容から発信へとスタンスが変わった大きなきっかけは、日本西洋古典学会が1950年に設立されたことにあるだろう。本稿では、日本において西洋古典が受容(reception)されていた時代、すなわち16世紀から日本西洋古典学会誕生までの歴史を概観したものを発表した。 また以下の論文も発表した。泰田伊知朗、「フランシスコ・ザビエルが携わったアジアにおける語学教育」、『観光学研究』、18、pp. 117-125、2019年3月。フランシスコ・ザビエルはヨーロッパを出てからインド、東南アジア、日本などで布教活動を行なった。本稿ではアジアにおいてザビエルが推進したラテン語教育について概観した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度後半において2本の論文を発表することができた。また前野良沢によるラテン語原典の日本語への翻訳に関する論文(Translation of Latin Texts of the Edo Period, by the Japanese Scholar Maeno Ryo;taku)も投稿中である。2019年度は5月に慶應大学にて「ワークショップ日本における西洋古典受容」、11月に台湾大学にてInternational Symposium on European Languages in East Asiaという研究会に参加予定である。2つの会でも日本、アジアにおける西洋古典受容について論じる予定にしている。また11月に台湾輔仁大学で開かれるTaiwan Association of Classical, Medieval and Renaissance Studiesにも参加する。そこでは申請者はギリシャの叙事詩に関する発表を行う予定であるが、アジアにおける西洋古典の受容というトピックはその会に参加する研究者たちにとっても非常に関心の高いテーマである。このトピックについてアジアの研究者たちと論じあうことによって、自身の研究を深めていきたい。これらの研究会への準備も着々と進めている。以上のことから概ね順調に推移していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、特に西洋古典の受容が東アジア、とりわけ日本においてどのようにして行われてきたのかという問題に重点を置く。日本への西洋古典の伝搬は、16世紀イエズス会の宣教師がラテン語を教授したことに端を発する。江戸時代の蘭学者は輸入された資料の中のギリシャ語 、ラテン語と格闘し、明治以降には宣教師やお雇い外国人が西洋古典の文学や言語を伝承した。そしてそれを日本の知識人たちが受容した結果、現在、西洋古典の影響は学問的な世界だけではなく、広く大衆文化の領域に及んでいる。こうした西洋古典の影響は日本のみならず中国 ・台湾・韓国の東アジア世界に共通して見られ、その伝搬・波及の歴史的なあり方は、欧米においてもそれを受容した東アジア世界においても、様々に論じられている。本研究は、国際的な視野のもとに、比較史的観点を交えながら受容の歴史をたどる。 現在取り組んでいる具体的な課題は、前野良沢によるラテン語の詩文の日本語翻訳(『西洋画賛訳文原稿』)に関する研究である。杉田玄白と『解体新書』を出して5年後、徳川将軍家から将軍家所蔵の複数の西洋画に付されたラテン語の詩文を翻訳するよう前 野は命じられた。これを前野はラテン語・オランダ語辞典をもとに翻訳した。この翻訳に関する研究を現在進めている。そのほかキリスト教の宣教師たちによるラテン語教育や、シーボルトの弟子で植物学者であった伊藤圭介によるラテン語翻訳も今後考察していきたい。シーボルトは伊藤にラテン語で書かれたFlora Japonicaをおくった。伊藤はそれを元にして泰西本草名疏を1829年に完成させた。彼の翻訳についても見て行きたい。
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Research Products
(2 results)