2019 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける西洋古典の受容―比較史的研究への試み
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19K20795
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
泰田 伊知朗 東洋大学, 国際観光学部, 教授 (20822076)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 西洋古典 / 受容 / イエズス会 / ラテン語 / 日本 / ザビエル / 語学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、まず5月にワークショップ「日本における西洋古典受容」(慶應大学)において、「日本における西洋古典受容の夜明け前: フランシスコ・ザビエルとラテン語そして日本語」というテーマで発表した。日本における西洋古典受容の始まりは16世紀のイエズス会によるラテン語教育に端を発する。そして宣教師たちによるラテン語教育と、宣教師たちのための日本語教育は表裏一体の関係にあった。日本に最初にキリスト教を伝えたと言われるザビエルが携わったラテン語教育と日本語教育に焦点を当てた研究である。 このワークショップでの発表原稿とその後の議論をもとにして、とくにザビエルが携わった日本語教育に焦点を当てた論文“Francisco Xavier’s activities regarding the Japanese Language” を執筆した。内容は、ザビエルが携わったアジアにおける現地語教育をインド、東南アジア、日本という地域を横断した形で行った比較研究である。この論文はACTA MISSIOLOGICAという雑誌に2019年末にアクセプトされた。この雑誌はEmerging Sources Citation Indexというデータベースに収録されている雑誌で、宗教学、宣教師学の分野では上位に位置する雑誌の一つである。おそらく2020年度内に出版されるであろう。 その他11月に、桂林理工大学における「2019年第一回日本語教育・日本学研究シンポジウム」において、「日本における外国語教育の歴史:ラテン語教育とラテン語受容を中心に」と題した講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度、2019年度を通じて、西洋古典の受容に関わる論文を3本出版し、先に述べたようにさらに1本アクセプトされている。出版済みの3本については以下である(全て研究代表者による単著): (1)フランシスコ・ザビエルが携わったアジアにおける語学教育, 観光学研究, 18, 117 - 125, 2019年03月 (2)前野良沢『西洋画賛訳文稿』の研究:カタカナ表記に関わる異読について, 東京大学草創期とその周辺:2014-2018年度 多分野交流演習「東京大学草創期の授業再現」報告集, 136 - 145, 2019年03月 (3)History and Reception of Greek and Latin Studies in Japan, in Almut-Barbara Renger and Xin Fan (eds.), Receptions of Greek and Roman Antiquity in East Asia (Brill), 73 - 87, 2018年11月 以上のことから考えて、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年5月のワークショップ「日本における西洋古典受容」(慶應大学)に参加した研究者たちが中心になって、論集を作成することになっている。Receptions of Greek and Roman Antiquity in Japanという仮タイトルで、大手出版社Brillから2023年に出版される予定である。この論集は、今後の日本における西洋古典受容史研究の柱になるものと期待される。研究代表者はTranslation of Latin Texts in the Edo Period by the Japanese Scholar Maeno Ryotakuというタイトルで、前野良沢によるラテン語翻訳について論ずる予定にしている。 またアジアにおけるイエズス会のラテン語教育に関しても現在論文を執筆中であり、2020年度中に論文完成を目指す。この点については、特に他のアジア諸国の研究者たちの関心を集めているテーマであり、研究代表者自身が台湾において長く在外研究を行ったという利点を生かし、中華圏の研究者と緊密に協力していきたい。
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Causes of Carryover |
2019年に慶應大学でワークショップ「日本における西洋古典受容」が開催され、研究代表者も口頭発表を行なった。このワークショップからReceptions of Greek and Roman Antiquity in Japanと題した論文集をBrillから出版するプロジェクトが始まった。研究代表者も計画を延長し重厚な研究を進めることで、西洋古典受容史研究に大きな意味を持つプロジェクトに貢献する。
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