2020 Fiscal Year Annual Research Report
和歌を用いた平安期『源氏物語』享受の解明に関する研究
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19K20799
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
瓦井 裕子 就実大学, 人文科学部, 講師 (20823967)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 源氏物語 / 和歌 / 享受 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、和歌を中心とする『源氏物語』を享受した作品と、『源氏物語』諸本との関係について研究を行った。 現在刊行されている『源氏物語』の注釈書は、定家本系統、それも室町期写本である大島本に多くを拠っている。しかし、定家本系統は鎌倉前期に成立した本文の系統であり、成立後も室町期までは伝流が限定的であったため、特に鎌倉期以前の『源氏物語』享受を考える上では、これのみに拠っていては不十分である。 そこで、平安・鎌倉期の和歌や散文作品における『源氏物語』享受がどのような本文に依拠しているかについて検討を行った。特に、鎌倉初期から中期ごろの例を扱ったところ、河内本系統や別本の使用実態を浮かび上がらせることができた。特に、ある本の独自異文が、享受例としては早い時期に一定数残っている事例もあり、現存諸本における数の優位性が享受実態とは必ずしも一致しないことも明らかとなった。 また、直系血族における『源氏物語』享受の依拠本文を調べたところ、調査の範囲では直系血族間でも同一の本文に依拠した痕跡は見出せなかった。ただし、『源氏物語』の場合、基本的には巻ごとに検討する必要があるため、より多くの例を収集することが今後必要になってくると思われる。 本年度が当該研究課題の最終年度ではあるが、引き続き『源氏物語』諸本と享受との関係や、諸本間の相互関係を検討していくことで、『源氏物語』享受の実相に迫っていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)